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まひる@正午の月
まひる@正午の月
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LOVER'S GAME ~発見~

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*注意*
こちらはLOVER‘S GAMEシリーズ第二作目です。
続きものですので、お手数ですが第一作目の『〜最悪の出会い〜』
からお読みくださいますよう、お願い申し上げます。


 昨日、あんなことがあって学校に行くのをだいぶ悩んだが、
行かないという選択肢はあまり存在しなかった。
いつもの変装をして、高等部寮から高等部校舎までの
無駄に広い廊下を歩いていく。
木漏れ日がキラキラしているのに見とれて、
翠は自分にのばされた腕に気づかなかった。
いきなり手を引かれて、そのまま近くの使われていない
空き教室に連れ込まれ、抱きしめられる。
何事かと顔を上げると、一番会いたくない人物がそこにいた。

「おはよう、翠。」

女性なら一発で堕ちそうなきらきらした笑顔を向けられ、
翠はため息をつきたくなるくらいにうんざりとした。
だが、外見が全く違うのに、
ここですぐに肯定するわけにはいかない。

「青海様が僕に話し掛けてくれるなんて光栄ですぅ!
おはようございまぁす!
あのぉ、僕ぅ、翠じゃないですぅ。
翡翠ですよぉ?
一度お相手してもらったのにぃ、忘れちゃったんですかぁ?」

内心反吐が出そうだが翠自身、演技力には多少自信がある。
そう簡単に見破れるわけがない。

「ふぅん・・・。さすが、世界的大スターの忘れ形見。
演技力は一級品だな。」

普段は見破れないはずなのに、なぜバレるのだろうか。
翠は母の入れ知恵が働いているように感じた。
しかし、母の入れ知恵ならばまだ確証はないに等しい。
演技を続ければまだ平気なはずだ。

「えぇ・・・。僕何のことかわかんないですぅ。
大スターの忘れ形見ぃ?なんですかぁ、それぇ?」

もう少しで青海は諦める。
そう思い、翠は演技を続ける。
すると青海は笑みを浮かべた。

「Jade U Walter(ジェード・ユー・ウォルター)。
有名なハリウッドスターだ。確か本名は、水上翡翠。
日本人だが、外国名で活動し主演作品はいつも大ヒット。
そして、翠、お前の実の父親だな。」

完全に母の入れ知恵のようだ。
翡翠がまだ無名の俳優で碧がまだ学生のころ、
二人はアメリカで恋に落ちた。
しかし、碧にはすでに婚約者である今の夫、
火山紅(こう)が居た。
婚約者と別れることも出来ず、碧はお腹に宿った
翠を産み、翡翠に託すことで二人は別れた。
Jadeの息子として育てられた翠だったが、
日本に来るとき、一切の証拠を消された。
自分がJadeの子だとは自分の身の回りで知る人は少ない。
これはもう、観念するしかなかった。

「よく、僕だと分かりましたね。
母から、聞いたんでしょう?」

翠は少し緩んでいた腕からするりと抜け出し、
目の前の長身の男に目を向ける。

「まぁな。碧さんはとても協力的だった。
翠は俺と結婚するほうが幸せだと言ってたぞ。」

青海はいとも簡単に腕から抜けられたことに
少し驚きつつもすぐまた意地悪そうに笑う。

「しあわせ・・・ねぇ・・・。」

母はけっして自分のしあわせなど願っていない。
翠にはそう思わせる確信がある。
一年前、父翡翠は病死した。
大学も卒業し、働くか大学院に入るかという時だった。
父の残してくれた遺産は、自分がこの先一生遊んで暮らせるだけの
莫大な額があった。
マンションも数棟持ち、そのすべての名義が翠になっていた。
翠はこの先働かずして暮らせるだけの財産を手に入れたのだ。
そして、父の葬儀後、初めて母と対面した。
美しい人だった。
碧は翠を引き取りたいと言い出した。
母と暮らせるのは嬉しかったので、翠は快諾した。
しかし、碧が翠を引き取ったのは、
婚約者を捨ててまで一緒にいたいと願った男の
面影が残る翠をそばに置きたかっただけだ。
だけど、愛した男の忘れ形見は想像を絶するほどに
碧を苦しめた。
もう、彼はいないのだと心から痛感してしまった。
だから、翠を八雲の養子にすることで
自分の罪を逃れようとしたのだ。
碧から直接聞いたわけではないが、翠はそう思っていた。
だからこそ、母は自分になかなか会わないのだと。

「にしても、このカッコじゃ確かにわかんねぇよな・・・。
お前のこと、がり勉の根暗だと思ってたからな。」

がり勉の根暗。確かにそう見えてもおかしくない外見だが、
がり勉と言われるくらいに勉強に没頭した覚えはない。
一応大学卒業までの学力はあるのだから、
日本の高校過程程度など、それほど勉強しなくても解ける。
確かに、英語に関しては日本語英語で、形式ばってるので
逆に点数的にはよくないかもしれないが、
学年主席を落とすくらいに悪いわけでもない。

「僕を見つけるということの意味を理解していますか。
もし、まかり間違って僕を落としてしまえば、
あなたは浮気も出来ずに男なんかと結婚しなくてはいけない。
そんなこと、できないでしょう?」

翠は壁にもたれかかり、腕を組んだ。
正直すぐに教室を抜け出そうと思ったのだが、
抜け出た時に青海が素早く退路を防いだため
叶わなかったのだ。

「お前を落とすことの意味はよくわかっている。
俺はお前を気に入った。だから落とす。」

青海は翠の顔のすぐ横に手をつく。
嫌味なほど高い身長が翠を見下ろす。

「You’re hopelessly stupid.(馬鹿じゃないの?)
気に入ったから落とす?それで僕が落ちるとでも?
そんな誠実さもない人間と結婚なんて御免です。」

翠は、青海にそれだけ吐き捨てると、顔を背けた。
すると、その態度が気に入らなかったのか
青海は翠のかけている眼鏡に手をかけ、そのまま取り去った。
翠はいきなり、少しクリアになった視界に驚いて顔を上げる

「なんだ、プラスチック製の伊達眼鏡か。」

青海はレンズ部分をコンコンと指ではじく。
退路を防いでいた腕はなくなったが、この学園で
不用意に顔をさらすことの危険性は翠も十分理解している。

「Return for me!(返せよ!)」

翠は青海の手にある眼鏡を取ろうと必死に腕を伸ばすが、
約20cmの身長差のせいで、大人が子供を
からかうような構図になってしまう。
それでも、なんとか取り返そうと手を伸ばすと、
翠はバランスを崩した。
前に前にと手を伸ばしていたせいか、
青海を押し倒すような体制で倒れた。

「痛って・・・。おい、翠?大丈夫か?」

屈辱的な倒れ方をしたのと、悔しいのとで、
翠は目に涙を溜める。

「返せよぉ…。」

今にも泣きそうな声で翠が懇願すると、
青海はふいっと顔を背け、翠を立たせた。
青海は悪かったと一言いうと、翠に眼鏡をかけた。

「メガネ、取られんなよ。」

青海はそれだけ言うと翠の頭を2、3度ぽんぽんと
すると、自ら空き教室を出た。


「あいつ・・・何がしたかったんだ?」

一人になった教室の中、翠は考えたがまったくわからなかった。
わかったのは、顔を背けるほど泣き顔が悲惨だったのか?
ということだけだ。

「あんな顔されたら、襲いたくなるだろ…。」

青海が赤い顔で呟いていたことも知らずに、
翠は急いで教室へと向かった。
               続く