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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺⇔俺⇔俺

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その日はどうかしていたんだ。
お前になら気持ちがわかるだろう?
今の俺に同情してくれるだろ?


「ったく、あのクソ上司め、俺を見下しやがって……!!」

腹立ちまぎれにハンドルをたたいた午前1時。
仕事帰りに車を走らせていると、車道の端にふらふら走る自転車。

「ちっ、危ねぇな。ひき殺してぇなくそっ」

ハンドルを切って、反対車線に移動した瞬間。



キキーーッ!!


覚えているのは、迫りくるヘッドライトだけ。
目が覚めるころには市役所だった。


「目が覚めましたか? おめでとうございます。
 あなたは今日初めての死亡者ですよ」

役人はパソコンを操作しながら片手間に話してくる。

「今、あなたの生前の行いを天界に送信中です。
 もうすぐ終わりますから、終わったら次の手続きへ……」

「お、おいっ! 俺は死んだのか!?」
「この流れで生きてるわけないでしょう」

「まだ人生の半分も生きてないのに!?
 こんなに急に死んでいいのかよ!」

「そういわれても。
 それに、あなたの事故で死んだ人もいるわけですし。
 あなただけがワガママ言うなんて、それはズルいですよ」

「知ったことかよ!! それよこせ!」
「あっちょっと!!」

役人のパソコンを奪い取ると、地面にたたきつけて破壊した。
その瞬間、目の前が真っ暗になって……


そして……

「はっ!」

「先生! 患者の目が覚めました!」
「あの昏睡状態から!? 奇跡だ!!」

病院で目が覚めた。

「やれやれ、あのまま死ぬところだったぜ。
 まあ、こうして生き返れたからよかったかな」


なんだろう。
なぜかやたらハッキリと見える。
メガネは……

「メガネは?」

「メガネ? あなたは最初から裸眼でしたよ。警察官さん」

「警察官!?」

洗面所に駆け込んで鏡をのぞく。
鏡に映ったのは俺ではなく、知らない男だった。

「誰だこりゃああああ!?」





西田 和夫(32) 警察官

警察犬訓練の帰りに自動車事故に遭い、
意識不明の重体になるもその後意識を取り戻す。
なお、相手の車に乗っていた男性(24)も意識を取り戻した。



「24歳の男性って俺じゃんか……。
 まさか、復活する途中で生き返り先の体を間違えた!?」

記事によると、俺(24)の本来の体も意識を取り戻しているらしい。
ってことは、俺の体には今警察官が入っているに違いない。

すぐに、俺の体が搬送された病院へ急ぐ。

「あのっ、ここに俺が搬送されてきませんでしたかっ!?」


―― きゃあああああ!!

病室から悲鳴が聞こえた。
受付をあとに病室へ向かうと、看護師が座り込んでいた。

「どうしたんですか!?」

「今、男の人が急に抱き付いて腰を振ってきたんです……」

「変態かっ!!」

病室の名前には、元々の俺の名前が書かれている。
あの野郎、俺の体をいいことに好き勝手やりやがって。

「必ず逮捕してみせますからっ!」

俺は俺の後を追う。



「急に噛みついてきたんです!」
「私なんてなめられました!」
「いきなり服を脱いで……おしっこを見せてきました!」


「あンの、変態警察めがぁぁぁぁ!!!」


どれだけ俺の体で変態行為すれば気が済むんだ!!
早く捕まえないと……!

「そうだ! 今の俺は警察なんだ!」

あっちが俺の体で好き好き勝手やるのなら、こっちだって。


『あーー、至急応援願います。犯人は24歳男性。
 通行人に見境なく斬りかかり銃を発砲し全裸で逃走中』


盛りに盛ったウソ報告のかいあって、
変態男1人追うためだけに銀行強盗ばりのパトカーが到着した。

「逃げられないように街を封鎖してください。
 犯人を刺激しないよう、
 行き止まりに追い詰めてからは2人きりにさせてください」

あらゆる逃げ道をふさぐと、ついに俺を追いつめた。

「さあ、俺の体を返してもらおうか!」

銃の照準を、俺(24)に合わせる。
この一発は絶対にはずさない。



バスッ。



消音でくぐもった音とともに、俺は崩れ落ちた。
確実に死んだだろう。
今度は銃口を自分の口にくわえて1発。


バスッ。


目が覚めると、見覚えのある役所だった。


「ああ、こんにちは。あなた、今日の死亡者ですか?
 ちょっと待ってくださいね。
 実はほぼ同時間帯に亡くなった人がいるので忙しくて……」

「……そうですか」

計画どおり。
俺はおもむろに役人のパソコンへと近づく。

「これ、壊したらどうなります?」

「困ります。なにせ昨日の1時に
 死亡した生物のデータがまだ入ってるんで。
 壊されれば別の体に別の魂が……ってちょっと!?」

「そうでなくちゃ困る!」

役人のパソコンを奪うと、思い切り地面にたたきつける。
がしゃんと地面に部品が散らばった。

そして……。


「きたきたきた!! これで元の体に戻れるぞ!!」

目の前が真っ暗になった。




『はっ!』

目が覚めたのは病院だった。
なんだか薬品の強いにおいを感じる。

「あの昏睡状態から生き返るなんて!」
「まさに奇跡だ!!」

ああ、よかった。
これで元の体に戻れたんだ。


「まさに奇跡の犬だ!!」


え?

自分の毛むくじゃらな体と、
体に取り付けられた『警察犬候補』のたすき。

ま、まさか……。


「ワン! ワンワンワンワンワンワン!!
 (誰か! 俺の本当の体を見つけて殺してくれ!)」


「先生! すごく元気に吠えてます!」
「きっと嬉しいんでしょうな」




一方、警察署では。

「大変です! 西田さんが警察署内でマーキングしています!!」
作品名:俺⇔俺⇔俺 作家名:かなりえずき