まだ彼女を創(つ)くってないの?
趣味:漫画、ゲーム
性格:おとなしい
「これでよし、と」
画面の中で彼女を作っていく。
顔の輪郭、体のスリーサイズから服装まで。
「やっぱり自分の趣味と合う可愛い子が彼女じゃないとな!」
エディットを済ませると、マイ彼女がやってきた。
「わかるー、第3話の展開はすごく萌えたよね」
「そうだね、あの漫画のこのキャラは最高だよね」
「私も君と同じように思うよ」
「……」
なんだかつまらない。
自分の趣味と同じで話も合うし、
顔や体もすべて俺好みの女の子のはずなのに。
「エディットし直そう」
マイ彼女をリセットし、ふたたび作成画面へと戻る。
容姿:美人
趣味:パーティ、旅行
性格:活発
今度は自分と真逆の設定にしてみた。
「前のマイ彼女の持っているものは、
すべて今の自分でも持っているからな。
自分にない要素が多ければきっと飽きないだろう!」
エディットが完了し、マイ彼女がやってきた。
「イエ~~! パーティピーポー! Fu~~!」
「もっとテンションアゲ♂アゲ♂ていこぉ~~!」
「はい飲んで! 飲んで忘れよぉーー!」
「うぉああああ!!!」
ダメだダメだ!
このノリについていけない!
慌ててマイ彼女をリセットした。
「自分にない要素が多すぎてストレスが……。
いったいどうすれば理想の彼女が作れるんだ……」
いや待てよ。
エディットを逆に使えばどうだろうか。
自分に合う彼女を作るんじゃなくて……
「今度は自分をエディットしてみよう!」
そうだよ!
超絶イケメンに自分を作り変えれば、
彼女なんてはいて捨てるほどできる。
容姿:後光が差すほどのイケメン
趣味:ありとあらゆるものに関心がある
性格:誰よりも優しい
「完璧だ……! 完璧すぎて怖い……!」
エディットを破壊して街に出た。
「見て! あの人、なんてイケメンなのかしら!」
「この世のものとは思えない!」
「すてき! ああ、あの人に見てもらえたら!」
ふふふ。
聞こえる聞こえる。
俺をあがめる声が。
これから、たくさんできる彼女から
自分の理想にあう彼女をピックアップしていけるはずだ。
・
・
・
数日後、俺は神殿の最奥に座らされていた。
「「「 おお! 神よ!! われらに慈悲を! 」」」
信者たちは土下座のように礼拝している。
俺はありあまるイケメン度に、
いつしか神として扱われるようになってしまった。
「あの……誰か俺の彼女にならない?」
「めっそうもない!」
「神の御許に私ではふさわしくありません!」
「世俗のものと交わっては、神がけがれます!」
完璧すぎるイケメンは、
彼女ナシでその生涯を終えた。
作品名:まだ彼女を創(つ)くってないの? 作家名:かなりえずき