ウサギとカメ - リベンジマッチ -
「うん、いいよ」
ウサギはカメに再び勝負を挑んだ。
カメにレースで負けたあの日から、
ウサギ界では後ろ耳刺されまくりの日々だった。
「今度は必ず勝ってやる!」
前回は油断から負けてしまったのであって、
普通にやっていればカメに負けるはずはない。
でも、油断はしない。
「カメ、ゴールはこの先にある旗の場所だから」
「スタート地点からじゃ見えないよ。
ずいぶん遠くに置いたんだね」
距離は前回よりもずっと長くしておいた。
これなら仮に途中で寝たとしてもカメはゴールまで到達できない。
寝るつもりはないけど。
「勝負は1週間後!」
「ずいぶん間が空くんだね。
1週間もあればなんでもできるよ」
「ああ、そうさ。なんでもできるんだ」
ウサギは前歯を出してシシシを笑う。
「ふふふ……カメめ今に見ていろ」
「ウサギさん、心の声漏れてます」
レースを1週間後にしたのにはワケがあった。
1週間後、ウサギは工場に向かった。
「できてる?」
「ああ、ジェットブースターは今できたところさ。
ところで、こんなもの何に使うんだい?」
「絶対に負けられない戦いに必要なの」
ウサギはブースターを装着してカメとの決戦へ。
「ウサギさん、それ……」
「なに? 持ち込んじゃダメなんて誰が言った?」
ウサギはにたりと会心のどや顔。
「よーーい……スタート!!」
ゴォォッ!!!
開始と同時にブースターからのロケットスタート。
ものの数秒でカメを引き離してしまった。
「あははは! これなら絶対に負けない!」
1週間かけて準備したかいがあった。
ぐんぐん旗の設置場所へと近づいていく。
「あ、あれ?」
ゴールに到着したものの旗がない。
「まさか!!」
ウサギは慌ててスタート地点に戻ると、
カメはすでにゴールしていた。
スタート地点すぐ後ろに置かれた旗のゴール地点に。
「そ、そんなぁ!」
1週間、ウサギがブースターを作っている間に
カメはゴール地点の旗を移動させていた。
これでウサギの二連敗。
「ひ、卑怯だぞ! ゴール地点を移動させるなんて!
おとなしく負ければいいじゃないか!
カメならバカ正直に進むのが普通だろう!!」
ウサギは自分のブースターを棚に上げての猛反論。
対してカメは、
「ウサギさん、そこまでして格下のカメに勝ちたいんですか?」
ウサギ、三連敗。
作品名:ウサギとカメ - リベンジマッチ - 作家名:かなりえずき