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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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穴フィラキシーショックのバツイチ結婚

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「お前、いつになったら結婚するんだよ」
「俺は結婚しません」

「未婚の男はいつまでも出世できないんだぞ?
 家族を管理できる人間こそが、人の上に立てるってもんだ」

「だったら、出世なんていりません」

俺は決めていた。
結婚なんてするもんか。

「どうして、そんなに結婚したくないんだよ」

「俺は結婚アナフィラキシー病なんです」

上司は目を丸くする。

「アナフィラキシーって、ハチとかに刺されるとなるやつか?」

「はい、俺は二度結婚すると死んでしまうんです」

「でもよ、この強制結婚世界でいつまで未婚を隠せるか……」

「わかってます。一度でも結婚してしまえば情報が漏れて、
 必ず俺は強制結婚させられてしまいます。
 だから1度でも結婚するわけにはいかないんです」

「出世を犠牲にしても?」
「出世を犠牲にしてもです」

もうかれこれ数十年。
強制結婚世界で必死に未婚を隠してきていた。

今の仕事も気に入っているし、
このままこの生活が続けばこれ以上の幸せはない。



が。

ある日、上司が俺に土下座してきた。


「頼む! 取引先の娘と結婚してくれ!」

「言ったはずです! 俺は結婚しないと……」

「このままじゃ会社はつぶれてしまうんだ!
 でも、取引先の娘と結婚してくれるなら合併してくれると……。
 勝手な話だとはわかってる! 頼む!!」

俺も仕事を失うわけにいかなかった。
会社のために結婚してしまった。


相手の社長令嬢は……。

「ちょっと、のどが渇いたわ」
「ねえ、なんか退屈だわ。旅行に連れてって」
「この家飽きたから引っ越しましょう」

めちゃくちゃな女だった。
美人ではあれど、性格面でかなり問題があった。

「がまんがまん……離婚したら、今度は強制結婚させられる。
 そうなれば、俺はアナフィラキシーで死んでしまう……」

「なにブツブツ言ってるのよ! 早く食事用意しなさいよ!」

離婚したい理由はすでに100項目を超えてもなお、
俺は必死に結婚にすがりつづけた。


そんなある日。

「離婚しましょう」

妻から俺に死刑宣告がなされた。


「りりり、離婚!? なんで!?」

「パパの会社が業績悪化したみたいなの。
 で、もっと大きな会社に吸収してもらおうと
 私が相手と結婚しなくちゃいけないから離婚するの」

「それじゃ、俺から別の人に乗り換え……」

「ま、あんたには飽きてきたしね」

俺は必死に妻に抱き付いた。
こんな女好きでもなんでもないけれど命は惜しい。

「頼む! 別れないでくれ! お願いだぁ! 死にたくない!」

「ちょっと! SP! こいつを引き剥がして!」

屈強なマッチョメンになんなくはがされると、
そのまま力技で離婚させられてしまった。

「さようなら、あんた、使用人としてはまあまあだったわ」





しかし、会社はものの見事につぶれた。

元妻が、相手先の会社に求婚したものの失敗したらしい。
ざまあ。

「って、こっちはそれどころじゃねぇよ!!」

結婚→離婚により、俺の情報は市役所に出てしまった。
このままだと勝手に強制結婚させられてしまう。

そうなれば、アナフィラキシーで俺は……。


――コンコン

『結婚市役所のものですが』


「ひいぃ!!」

『ドアを開けてください。
 早く結婚しないと、あなた処刑されますよ』

どうするどうする。
いったいどうすれば。


『では、強制的に入ります』


ドアがめきめきと音を立てて壊される。

『さあ早く結婚するんだ!!』


「じっ、実は俺はゲイなんだ!!」


『えっ……!?』

結婚アナフィラキシーは2回目の結婚で発症する。
でも、同性同士での結婚は、俺はまだ0回。

『そうだったんですか、では日を改めます』

役人は立ち去った。

「いやぁよかったよかった」



後日、役人は結婚相手を連れてきた。


「君がゲイだったなんて驚いたよ。
 これからは、仲良くしていこう」

取引先の社長はにこりと笑った。
会社は大手と提携し安定したアッーー