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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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親になるための子供プラモデル

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「ああああ! 子供がほしい!
 でも男はいらない! 結婚もしたくない!!」

この歳にもなると、勝手に母性が出てくるのか
子供がかわいくて欲しくなる。でも結婚したくない。

男なんていう生物と一生飼い殺しされるなんて絶対イヤだ。

「せめて、妄想だけで子供を作ろう」

とはいえ、私には子供がいないので
親の話を聞いて妄想の基盤にすることにした。


「子供? そうねぇ、すごく大変だったわぁ」
「どんなふうに?」

「頑張っても頑張ってもなかなかできなくてねぇ」
「ふむふむ」

「お父さんったら、あなたが反抗的だったから
 ついつい叩いたりして外れたこともあったけど
 それからすぐに謝って……もうとにかく大変よ」

「そうなんだぁ」

実際に話を聞けば聞くほど怖くなってきた。
出産の苦しみ、子育ての大変さ。

「やっぱり私には無理なのかなぁ……」

諦めてパソコンでふらふらと検索をしていた。



子供

★★★★☆ 212件のカスタマーレビュー
¥10,000より1新品



「これ……こども?」

画像は紛れもなく子供で、レビューも好意的なものばかり。
自分好みの子供を選ぶと届けられるらしい。

「これで子供を買えば、痛い思いしなくても子供が手に入る!」

さっそく注文。

翌日にちゃんと子供は届いた。
ただし、体はばらばらで。


「組み立てるの……ね」

そういえば、レビューの中にいくつか組み立ての文句があった。
しょうがないので作り始める。



それから数時間後。

「無理ぃ! ムリムリムリ! 難しいよ!!」

プラモデル上級者ですら難しそうな説明書に、
多すぎるパーツにてこずりまだ頭しかできていない。

素人が下手に作るもんだから、
せっかくの顔パーツも汚れてしまっているし……。

「これじゃなんとか完成させても、
 わたし好みの子供にならないじゃない……そうだ!」

友達に、こういうの得意な人がいたはず。
連絡を取るとすぐにやってきてくれた。

「ははぁ、これは確かに難しそう。でも、できるよ」

「それじゃお願い。できるだけ早くね。
 もう子供が欲しくてたまらないんだから」

「はいはい」

友達はもくもくと子供の組み立てをはじめた。
産む大変さを感じてもらおうと、
わざと難しくされた説明書もなんのその。


「……できた!」

子供はついに完成した。
あまりの完成度にほれぼれする。

「きゃーーかわいいーー。かーわーいーいーー。
 作ってくれてありがとうね。
 ほら、ママに抱き付いて大好きって言って」

「ママ、だいすき」

「キャーー! ママだって! 子供は最高!」

「ママ、だいすき」
「わかってるわーー! ママも大好きよぉーー!」

「ママ、だいすき」
「もっと言って! もっとママをほめて!」

その様子を見ていた友達は違和感を感じた。
説明書によれば、完成した子供はちゃんと子供らしく振舞うはず。

だけど、これはなんだか……まるで機械だ。

「まさか……!」

友人は子供を作っていた作業場所へと戻る。
考えられる原因はただひとつ。
自分の組み立てミスだ。


けれど、いくら確かめても問題はなかった。

「おかしい、ちゃんとパーツは使い切ったし……。
 でも、だったらなんであんな子供に……」

「なに探してるの?」

「パーツだよ。どこかでパーツを組み込み忘れたのかもしれないんだ」

「ああ、それなら、これでしょ?」

私は友人の目の前に、そのパーツを見せた。



「頭作っている時に、あってても不要だから外しておいたの。
 だって、反抗されたりしたら可愛くないじゃない?
 それにこのパーツなら、私の頭にも入っていないし」

私は組み込まなかった"人間らしさ"パーツを見せた。

「私の子供なんだもん。私の命令には従うのが当然でしょう?」
「はい、ママ、だいすき」



友人はこの子の将来が、
こんな親にしかなれない不幸を気の毒に思った。


「大丈夫よ、人間は"人間らしさ"がなくても生きていけるから」

私はにこりと微笑んだ。
愛する娘と一緒に。