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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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魔法ランプは檻の中に

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[監獄実験]―――――――――――――――――――――――――
 閉鎖された環境で、こちらで勝手に決めた「役」を与えると
 いつの間にか、自分から「役」になりきってしまう実験。
――――――――――――――――――――――――――――――

監獄に運ばれてきたのはいくつもの魔法のランプ。
それぞれこすって魔人を出してから牢屋に閉じ込める。

数多くのスタッフに囲まれて実験は失敗しそうもない。

「それでは、魔人監獄実験をはじめる!」


まずは、セオリー通りに魔神たちを二組のグループに分ける。
片方を「神」、片方を「従者」とする。

神グループには神らしく、従者をこき使えるし
従者グループの魔人は、ちゃんと従者らしくするよう言いつける。

人間であれば、数日もするうちに
神グループは「自分は神だ。選ばれた存在だ」と
従者グループは「自分は虐げられる存在だ」と勝手に思う。

それが魔人に通用するのか。

「もし、通用するならランプの魔人を
 自分の好きなように動かすことができるかもしれない」

ごくりと生唾を飲み込んで、実験の成り行きを見守った。


しかし。

「おーーい、神グループ。一緒に遊ぼうぜ」
「そうだな、従者とか神とか関係ないよ」


「なぜだ! なぜうまくいかない!」

人間では神と従者間の溝が広がるころなのに!
いったいどうして……。


「おい! どうして神らしく振舞わない!
 お前も! 従者らしくへりくだろうとは思わないのか!?」

「魔人はもともとが高貴なる存在」
「人間のように劣等感や支配欲などはない」
「ゆえに、ペコペコする必要も、まして偉そうにする理由もない」

「くそっ! やっぱり失敗か!!」

魔人だからこそ、役になりきって
ほかの魔人を支配したりだとかゲスなことはしない。
そんなふうに考えているんだろう。

魔人だからこそ……。


「そうだ! 魔人であることを忘れさせればいいんだ!」

ランプをこすったスタッフを呼び集めて、
それぞれの担当した魔人のもとへ行かせる。

魔人それぞれに同じ願いを叶えさせた。


"魔人であることを忘れろ"


魔人たちは自分たちの力で自分たちのことを忘れた。
それからの実験はスムーズに進行した。

「おらぁ! 神に従え!」
「ひぃ! すみませんっ!」

魔人らしい高貴さを失った魔人たちは、
すっかり自分たちの与えられた役になりきってしまった。

監獄実験は大成功。

「よし、この結果をさっそく提出しちゃおう」

レポートをまとめると、実験長のもとへ。




「……ということで、
 魔人も魔人であることを忘れさせればうまく機能します」

「そのようだね」

「実験長。それで実験サンプルの彼らはどうしますか?
 このままいつまでも神と従者の役回りというのも……」

「ここでスタッフとして働かせればいい」
「わかりました」

魔人がいなくなると、秘書が声をかける。

「社長。あの魔人はいつになったら
 "スタッフ役"を与えられていることに気付かせるんですか?」

実験長はにいと笑った。


「それも実験さ」