単調なハリウッド世界を脱出したくて
いきなり別の車が幅寄せしてきた。
「ああ……またカーチェイスかぁ……」
車をぶつけあいながら銃を撃ち合いながらのカーチェイス。
ハリウッド世界では毎日のことなので慣れたけど、
毎回車が爆破されるのでお金が大変なことに。
「私はオリビア。謎の組織スペクトラムを追っているスパイよ」
「ああ、そうですか……」
今日の最後の方で裏切るな、この女。
でもそれを許して最後には仲良くなる。
ハリウッド世界では、
毎日違う女がヒロインとしてやってくるも
毎回展開は同じなのでもう慣れた。
「大変よ! 空から宇宙人が! ホワイトハウスを守って!
特殊能力のスーパーヒーロー集団が来たわ!
これを止めないと世界が終わってしまうわ!」
「もう嫌だあああ!!」
毎日ヒーローとして世界を救い続けるのは疲れた!!
「そうだ! ハリウッド世界を出よう!」
この世界さえ出てしまえば問題ないんだ。
ついにハリウッド世界を出ると、
スパイとか謎の組織とかヒーローとかから解放された。
「いやぁ、これで安心だ」
すると、どこからともなく音楽がかかり体が勝手に踊りだす。
「な、なんだぁ!?」
「おはよう インドはダンスに始まりダンスに終わる。
さあ、午前5時から朝ダンスだ♪」
「えええええ!?」
インド世界やってきてしまった俺は、
1日中キレッキレのダンスを踊らされ続けた……。
「ま、間違った……別の世界に行こう……」
インド世界を出て別の世界へ。
朝っぱらからダンスを踊るわけでもなく、
宇宙人がホワイトハウスを攻撃するでもない世界。
「うん、ここなら大丈夫そうだな」
街をくまなく見ても普通そうだ。
ちょっと刺激が足りない気もするけれど、これはこれで……。
「きゃーー助けてーー!」
通りの奥から女性が走って逃げてくる。
その後ろにマッチョな男たちが追いかける。
それを見た瞬間、体が勝手にアクロバットな動きをはじめた。
椅子を蹴り上げ、路地に滑り込み、時計塔から落下し……。
「ななな、なんだこれぇ!?」
飛び降りたり、飛び乗ったりと忙しすぎる!
「ダメだ! 香港世界も俺には合わない!」
こんなの毎日毎日やってたら体が持たないよ!
いったい俺はどの世界に行けばいいんだ!
すると、男がやってきた。
「それじゃ裏日本世界に行っていたら?」
「日本? ああ、一度行ったことあるよ。
あの世界は声が小さすぎて聞き取れないし、
絆だの家族愛だのですごく退屈だったんだ」
「それはごく一部」
男の口車に乗せられて、
もう一度日本世界に行ってみることに。
「こ、これは……!!」
男の言う通り、俺はごく一部しか体験していなかった。
巨人が来たかと思いきや、バケモノと友達になったり
宇宙人に寄生されたり、アイドルになったり。
毎日過ごしていても、とても飽きが来ない。
「この世界、最高だ!」
日本世界の裏側を教えてくれた男にお礼が言いたくなった。
このファンタジックな世界を教えてくれたお礼を。
「ああ、見つけた!」
「君は前の……どうしたんだ?」
「日本世界を教えてくれたお礼を言いたくって!
おかげで毎日楽しくて充実しています!」
「それはよかった」
お礼が伝えられて満足した俺は帰ろうとした。
それを男がひきとめた。
「言い忘れていたことがあったんだ」
男は鏡を取り出し、俺を体の横から映した。
「裏日本世界に行くと、2次元になってしまうんだよ」
鏡には、ペラペラになった俺が映っていた。
作品名:単調なハリウッド世界を脱出したくて 作家名:かなりえずき