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わたしの菩薩

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 お盆も間近な日盛りに私は転寝をしていた。どれほどの時が経っていたのだろう。突如こそばゆい感覚に刺激された。何かが私の脇の下をこちょこちょとくすぐっている。蝿が止まったような気がして無意識に手で追っ払う。再び眠りに入ると今度は足の裏をこちょこちょとする。さすがにはっとして私は目が覚めた…ような気がした。

 ぼんやり眼を開けると三つの優しい影が私の顔を覗き込んでいた。優しいお顔だ。私はそれが誰だかわかった。仏様だ。観世音菩薩と不動明王ともう一つはよくわからない。

 私は幸せな気持ちになった。目が覚めているようで実は覚めていなかった。其の影の一つは10年前に天国に召された母で観世音菩薩の姿となっていた。もう一つは不動明王の姿、いかつい形相だが家を守ってきた我が家の主だ。天に逝ってから生前敬愛していた不動明王の姿になっているとは、あちらで幸せに暮らしているにちがいない。

 もう一つは何菩薩かわからない。何しろ50年も前に出会った人の再来で、私にさんざん懺悔して突如あの世に逝ってしまったのである。でも私を囲む三つ巴の中にちゃんと位置している。
 この菩薩たちはこれからもずっと私を見守り続けてくれるにちがいないと私は信じているのだ。苦しいことがあれば心の内でこの菩薩たちに縋ればすぐに助けに来てくれる、いつなんどきでも、どこへでも。

 彼らがあちらの世界に行ったあと、私は彼らに救われたことを実感する機会に遭遇していた。何か異変があったときのその結末はきっと彼らのお手配だとすんなり信じられるのだ。お手配だからこれで良かったんだと。


 今日は午睡中に出会えて良かった。いつもは姿は見えないけれどなにかしらその気配を感じていて、幸せな気分のときはただそれだけで良い。とても悲しいことがあると彼らのお手配を感じる。

 仏などこの世にいないというやからがいるが無神論とかの問題ではなく、生前自分を愛してくれた存在は守護神となっていつも自分を守ってくれている。
愛とは自己と他者との繋がりの化身である。
作品名:わたしの菩薩 作家名:笹峰霧子