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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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9人の腰抜け赤ペン先生

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『赤ペン先生に合格しました!』


急に届いた手紙で赤ペン先生に受かってしまった。
紙に書かれている場所に向かうと、
丸テーブルに赤い服を着た10人が座っていた。

「君が10人目の赤ペン先生だね」
「さあ、赤ペン会議をはじめよう」

赤ペン先生達の前には積み上げられた紙の束。
これから、この膨大な数に完璧な答えを書いていく。

それが赤ペン先生。

「では、1枚目の問い合わせだ」


>どうして自殺しちゃいけないんですか


赤ペン先生の顔色が青ざめた。


「これは……」
「どう返せばいいんだ」
「いきなりヘビーな……」

「これは難しい問題だ。どうでしょう。
 1日みんな個人で考えて明日提出して審議するのは」

「賛成!」
「賛成!」
「賛成!」

「いや、あの……まだこんなにも仕事残って……」

俺の必死な反対もあっさり打ち消された。

「では、また明日ということで!!」

そして赤ペン先生は超速解散した。




翌日。

「……あれ?」

俺ともう一人しか赤ペン先生は来なかった。
ここでやっと自分のマヌケに気が付いた。

「無理もない。自殺なんてことに答えを出せる人はいないし
 誰もがそんな責任を押し付けられたくないに決まってる」

「だろうな……でも、赤ペン先生としてここにいる以上
 やっぱりちゃんと答えを出さなくちゃな」

大量の紙の束を見て、うんざりする使命感にかられた。



>どうして自殺しちゃいけないんですか



「人の命は尊いから?」
「そんな安い言葉じゃね」

「親が必死に産んでくれたから?」
「悩んでいるのは親じゃないでしょ」

「死んだときの後片付けが大変だから?」
「きれいに死ぬならいいことになるよ」


「ぬあああ!! わっかんねぇぇぇ!!」


自殺なんて答えだせるわけないよ!

「……まあ、普通に生きている人間が
 この人みたいに死ぬほど悩むことなんてないし。
 考えたこともないことに、答えは出せないよね」

男は紙をシュレッターの方へと持っていく。

「見なかったことにすればいい。
 どうせ、誰にも答えなんて出せないんだし」




「待ってくれ!!」

俺はとっさに声が出た。

「やっぱり答えを出そう!」

「……どうせわからないって」
「わからないよ!!」

「だったら……」

「でも、考えなくていいことじゃないだろ!
 間違っていても正しくなくても真剣に考えるんだよ!」

思わず大声を出してしまった。
急に男はぼろぼろと涙を流し始める。

「うわっ、ごめん! 怒ってるわけじゃなくって……」

「いや……そうじゃないんだ……」

男は落ち着いてから話し始める。


「この紙を書いたのは僕なんだ。
 赤ペン先生が人の死についてどう考えてくれるのか。
 それを現場でどうしても聞きたくって。

 やっぱり、みんな逃げてしまったけど、
 きみはこんなにも真剣に僕の死について考えてくれた」


「ああ、もちろんだ。
 あんたに死なれると困る人がいるんだから」

「その言葉だけで十分だ……ありがとう」
「それじゃもう自殺は?」

「もちろん止める。僕を必要としてくれる人がいるとわかったから」

「ああ、君が必要だ。絶対に死なないでくれ」

遅くまで話し合った俺たちは、解散することに。



翌日。

赤ペン先生は、自殺を辞めた男しか来なかった。
目の前には手つかずのままになってる大量の紙束。


「死なれると困るって……そういうことかよ!!」


男は自殺した。