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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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84歳からの恋愛治療

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『現在、国では年齢や性別、人種、
 生物にとらわれない新しい学校の創設をめざし……

「先生、次の患者さんです」
「ああ、うん」

テレビの電源を来って、仕事スイッチを入れる。
恋愛医療医としてしゃんとしなければ。

「どうも、わたし、ツネといいます」

やってきたのは70代過ぎのおばあちゃん。

「……」
「……」

「おばあちゃん」
「はい、なんですか?」

「高齢科ならあっちの棟に……」

「あら、失礼ね。私はちゃんと恋愛治療に来たんですよ」

おばあちゃんは目を乙女のようにきらきらさせた。

「主人が死んだ今、昔のような燃える恋がしたいの。
 先生は恋愛医療のトップだと聞いてきましたのよ」

「まあ……できなくはないですが」

「学校でたくさんしたいんです」
「学校も行ってるんですか!」

まあ、さっきのニュースで年齢制限ない学校も出てきていたし。
恋愛治療におばあちゃんが来るのも当たり前なのか。

「で、先生は治療できるんですよね?」
「ええもちろん。私は一度もウソついたことはありません」
「楽しみだわ」

おばあちゃんをさっそく治療台へと移動させる。


「いいですか、恋愛とは神秘的なものじゃないんです。
 脳で化学物質が分泌されているだけの状態なんですよ」

「えっと……?」

「つまり、人と人との恋なんて脳の暴走なんです。
 だから化学物質を分泌されやすい状況を作れば……」


治療はすぐに終わった。


「誰でも、どんな年齢になっても恋はできるんです」

「先生、本当にこれで大丈夫なんですか?」

「もちろん。私はこれまで一度もウソをついたことがありません」
「さすが先生!」



治療後からしばらくして、おばあちゃんは戻ってきた。

「先生、治療ありがとうございます。
 おかげで、ホラ。私も恋をして新しい彼氏ができました!」

「≠仝¶¨±Ю‰」

おばあちゃんは屈強な体のサイクロプスを連れていた。


「先生の恋愛治療は人間以外にも効果あるんですね!」

「え、ええ、もちろん……」


その日、俺ははじめてウソをついた。