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You are what you eat

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「you are what you eat」
(あなたが食べたのはあなた自身)

ある夏の日のこと。僕はスターバックスに入って飲み物を注文しようとした。ちょうど金曜日の夕方で、店内は人でいっぱいだった。にも関わらず、僕がスターバックスに入った理由は、僕のライフワークの文芸翻訳に取り掛かる為だった。
僕はアルバイトが終わった直後で、肉体的にも精神的にも疲労を感じていた。なのでもうひと頑張りするために、あるいは眠らない為に、家には帰らないことにした。


僕は野外で喫茶店を利用する。実際のところ、作業をするのにベストな環境は、自然の中だと僕は考える。
人があまり目につかない環境だとなお良い。
自然の中は変化に満ちている。
山や森の中には常に風が吹いていて、海辺には波が押し寄せる。
そして、生き物の活気に満ちている。
生と死が自然の中にある。
周囲は常に変化し続けていて、居心地が良いものだ。
しかし、それらが聞こえすぎると、かえって騒がしいものだ。
人混みなんかとは比べものにならない時もある。
それに比べれば、喫茶店の中の人混みなど大したものではない。
しかし、ライフワークの為に山や海へ毎日出かけるのは正直、面倒くさい。雨などが降れば作業は出来ない。モチベーションも一気に下がる。

喫茶店はライフワークに取り掛かるのに不自由しない。まず、腰を落ち着けつつ、飲み物に不自由せず、可能であれば喫煙室がある所がベストだ。
僕は飲み物を注文することにした。
今日は花金である。疲労しているとはいえ、これからの二日間の事を考えると気分も浮かれる。
なので、いつも頼むものよりも少しだけ豪華なものにすることにした。
コーヒープラペチーノである。
期間限定メニューだとか、ほとんどスイーツに近いメニューにも目を引かれるが、やはり少し高い。僕がお店に居るのは大体二時間くらいであるのと、作業をするのが目的であるので、それらがそっちのけになってしまうような気もする。
いつも注文しているのはスターバックスラテだ。それに比べると少しばかりグレードアップしているので、僕の気持ちは満たされる。
そして、レジで注文をする。
僕は言った。「メニュー見てから決めるので少し待ってくれませんか?」
僕は頼むメニューを決めていたはずだ。優柔不断過ぎるのは僕の良くない性質だ。
そして三分後に僕の心は決まった。
僕のあたまの中で7人ほどの僕が円卓会議を行った結果、最初に決めていたコーヒープラペチーノの結論に至った。
そして僕は注文を店員さんに発した。
「スターバックスラテで」
あたまの中の僕らが盛大に突っ込んだ。
「なんでやねん」
そして、僕(本人)は返した。
「僕も分からん」

ただの気まぐれではない。その結論が合理的であったのでもない。僕は確かに、心の中の深い部分でスターバックスラテにするという結論を出した。逆に言うと、コーヒープラペチーノにしたくなかったのだ。
なぜ、そうしたのか。僕は以前に読んだエッセイを思い出した。
「you are what you eat」
訳すと、「あなたが食べたのはあなた自身」といったところか。
さておき「you are what you eat」ということばと、僕のスターバックスでの優柔不断っぷりとどう関係があるのか。
そもそも「you are what you eat」つまり「あなたが食べたのはあなた自身」とはどういう意味なのだろうか。
そのことばに段階を付けると「あなたはあなたを食べた。そしてあなた自身になった」ともなる。つまり、スターバックスラテは他ならぬ僕自身だ。
僕にとってのスターバックスラテとは何なのか。
スターバックスラテは僕にとってのライフワークのパートナーのようなものだ。これが無ければ始まらないし、先へは進めない。
気づけば、僕のライフワークの傍らにはいつもスターバックスラテが隣にあった。
こうなると、もう相棒のようなものだ。人間関係に例えるとこうなる。
僕はコーヒープラペチーノに浮気をした。
その日は花金であり、僕は浮かれていたのだろう。いつもと違う日常を過ごしてみたくなった。
だから相棒ではなく、少し可愛い、魅力的なほうを選んだ。同じ相手といつも一緒に居ると飽きるものだ。甘くはなく、どちらかというと苦味ばかりが気になってきてしまう。
更に言うと、期間限定だの、スペシャルメニューだのとなってくると、無駄に気を使う。ライフワークどころではなくなってしまうものだ。ものすごい美人と一緒に居ると、変に気を使ってしまって、逆に落ち着かないのと同じで。
僕は違うものを好きになった。けれどいつもと同じものを、気づけば選んでしまっていた。

要するに、スターバックスラテが傍らにある方が、落ち着いていつも通りのパフォーマンスを維持出来るものだ。僕は心の中の深い部分では安定を求めていたのだろう。何も気を使わなくていいし、すべきことに対して僕は真摯で居られる。いつも通り、自分の道をまっすぐに進むことが出来る。
僕にとってのライフワークのパートナーは、スターバックスラテでなくてはならないのだ。

「you are what you eat」ということばに置き換えると、スターバックスラテは僕自身ということになる。
すなわち、変化を好まず、普段通りであること、他の道に沿れ、他の道に憧れている。
恋愛に置き換えてみると、一人の相手に一途ではなく、色んな人を好きになる。
新しい恋や、刺激的な恋愛、今とは違う形の恋愛に憧れているけれども、最終的には安定を求める。
そんな、情けないような自分の心の性質が明らかになってしまった。

「you are what you eat」
ならば、今の自分ではなく、違う自分になりたいのなら、あえて違う味を飲んでみるのはどうだろうか。
口に入れたものが自分自身になる。
それが自分自身の人生への暗示になり、人生への変化を促すのかもしれない。
マザー・テレサの言葉を借りるのなら思考は最終的に、自分自身の運命に繋がる。
口に入れるということは、少なからず、それを口に入れることを選択したということになる。
そのとき口にしたものが、いつか自分自身になるのかもしれない。

「you are what you eat」
あなたはどう?
作品名:You are what you eat 作家名:Makoto,I,O