お前の遺伝子のせいでっ!
「いいんだよ」
「うんわかった。好きにしていいよ」
浮気だと知ってても俺に応じてくれる。
今の彼女がいなくても、俺には別の女くらいいる。
彼女とちがい頭がゆるくて、
なんでも俺の言うとおりにしてくれる女がな。
浮気から戻ると、彼女が家で待っていた。
「……さっきはごめん」
彼女からまさかの謝罪だった。
「私、カッとなっちゃって……言い過ぎたわ」
「いいや! 俺の方こそごめん!
もっと早くに謝っておくべきだった!」
あてつけに浮気したその日に仲直りしてしまった。
最短ハッピーエンドだ。
「良かったスね、仲直りできて」
「うぉっ?! 誰だお前!」
家には男が待っていた。
「あなたの2世ッス」
「に、2世……?」
「あなたが頑固で謝れないから、
その遺伝子を引き継いだ僕は未来で困ってるんッス」
「はぁ……」
それお前のせいじゃないの?
「俺から言っても信じてもらえそうもないので、
彼女さんに言って治してもらいましたッス」
「それじゃすぐに仲直りできたのは……」
「はい、あなたのダメな部分を言っていたら
彼女さんが、あなたに同情して頭冷えたんッスかね」
「なにしてくれてんだよ!
パーフェクトイケメンで通ってるのに!」
「すぐ怒るところ、治してもらえますか?
その遺伝子のせいで僕は未来で友達ができないんス」
「むぅ……」
こいつ絶対バカだ。
でもこのまま居すわられるのも迷惑だ。
「わかった治すよ」
「あと、ギャンブル癖も」
「わかった」
「あと女癖の悪さも」
「わかったって!!」
「オーケー。未来が変わってなければまた来ます」
2世はミシン型のタイムマシンで未来へ帰った。
数日後、ふたたび戻ってくるなんて思ってもみなかった。
「なんでまた来てるんだよ!
ちゃんと女癖もギャンブルも治したし、
なんなら酒癖だってちゃんと……」
「あなたの運動神経のなさで未来じゃ困ってるんッス」
「はぁ!?」
「未来では運動神経のない男子は奴隷の身分になるんです」
「どれい……」
未来は思っていた以上にシビアでハードだった。
「でも運動神経なんて……もって生まれた才能だろ」
「それじゃ俺は奴隷になれと?」
「いや……そうじゃないけど」
悩んでいると、目についたのはタイムマシン。
これなら俺でも動かすことはできるんじゃないか?
「なあ、これ俺にも使えるか?」
「えっ、まさか……」
「行ってくる!!」
タイムマシンで行くのは祖父の時代。
過去につくと祖父に事情を説明し何とか説得までこぎつけた。
「というわけで、めちゃくちゃ運動してくれ!」
「……御意」
「そして、息子にもスポーツをめっちゃやらせてくれ!」
「承知たてまつった」
再び現代に戻って、2世にタイムマシンを返した。
「これでOKだ。今の俺にも運動神経は引き継がれているし、
今後はしっかり運動するから遺伝は心配ない」
「マジっすか、どうもっす!」
2世は未来へ戻った。
なにがどう間違えばあんな風に頭の悪いように……。
「さーせん、やっぱりダメっした」
「うそぉ!?」
しかも、速攻戻ってきやがった。
「運動神経は何とかなったんッスけどぉ。
なんつーか、学校の成績が悪くて迫害されてぇ……」
「バカな! 俺の成績はオールAだぞ!」
言って気付いた。
心当たりは1人しかいない。
俺は彼女に電話をかけた。
『ちょっと! 別れたいってどういうこと!?
理由を説明してよ! 理由を!!』
「理由は……君がレベルの低い学校卒だったからだ」
『はぁ!? ふざけないで!! 死ね!』
ブチッ。ツーツー……。
思えば、彼女は俺よりも怒りっぽかった。
きっとそれが遺伝したんだろう。
「これで今度こそ完璧だ。
これからは自分より学力のある女しか付き合わないし、
運動もかかさない。最高の遺伝子だけをお前に残す」
「あざーーす」
「だからもう過去には来るなよ」
「修正されてたら来ないッス」
2世を未来に返すと、やっと落ち着いた。
時間がかかったけどこれでやっとハッピーエンドだ。
しばらくして、浮気相手がやってきた。
「わたし、赤ちゃんできちゃったぁ〜〜」
まさか原因って……。
「サーセン、やっぱり未来変わってなかったッス」
作品名:お前の遺伝子のせいでっ! 作家名:かなりえずき