『 見たことがある顔 』
俺はすれ違いざまに見た顔を思い出そうとしたが、誰だったか思い出せなかった。
だが、そのうちに思い出すだろう。
見たことがある顔が多くなった。
私は、あまりにも同じ顔に囲まれて生きている。
美人やハンサムには何種類もないからではないか。
聞いたことがある声は、思い出の中に存在し、今ここにいるはずではないのだ。
そういう声が多くなり、それをどこか遠くの誰かが聞いたのだと思う。
外国もこの国と同じ顔になり、私はついに恐怖に震えるようになった。
それは、私の子供が世界のどこかに存在し、この存在を脅かしているからである。
しかし、人の存在を脅かすのは他人だけとは限らない。
誰かに狙われているということを口にすることは、死を意味するからだ。
そうやって、2年半の戦いに幕を閉じようとする度に、終わらせない力が私を押し潰してゆく。
いつの時代も、滅ぼす者は同じであり、倒れ込む私も同じだった。
起き上がると狙撃隊が襲撃してくるぞ。
そういう国じゃないから大丈夫だろう。
誰も彼もがプラカードを持ち、戦い疲れて死んでいくのか。
ギターに持ち変える人は、もういない。
ペンの持つ力は絶大であったが、今日の文字は明日というデジタルに上書きされてしまう。
私はまた、震撼した。
叫び声を涙に変え、今日も浅い呼吸で酸素を探す。
作品名:『 見たことがある顔 』 作家名:みゅーずりん仮名