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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ウチの爆弾あずかってくれますか?

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ピンポーン。

「あの! これあずかってください!
 中身がなくなったら必ず取りに戻りますから!」

タンクトップから見える胸元に
鼻の下をのばしつつ俺の答えは一択だ。

「もちろんです」
「おねがいします!」

女が去ると、気になるのは渡された段ボール。
小さな荷物でも入っているのだろうか。

「なんだろう」

開けてみると、中には爆弾が入っていた。

 ・
 ・
 ・

「無理ですね。これ解除できません」
「えぇ!?」

爆弾処理班がさじをなげてしまった。

「かろうじてわかったのは、
 この爆弾はあなたから離すことができないってことです」

「ええええ!?」

おいおいおい。
それじゃどうするんだよ!

「渡されたのなら返却すればいいのでは?」
「それだ!!」

爆弾の解除は極めて難しい。
だったら、女を探す方が簡単だろう。
見つけ出して押し付け返せば問題解決だ。


が。


「そんな女性いませんよ」
「さあ……知らないねぇ」
「まだ事件になったわけじゃないし」

「警察コラーー!」

警察で聞いても通行人に聞いても誰も知らない。
このままじゃ……。

あの女の言葉がどんどん鮮明になっていく。


"中身がなくなったら必ず取りに戻りますから"


「中身って……爆発するってこと……?」

冷汗が流れてくる。

間違いない。
女は爆弾の爆発を待ってから戻るつもりなんだ。

ああ、こんなことなら……。
もっと親孝行でもしておけばよかった……。




ピンポーーン。



「すみません、預けていたもの取りに戻りました」

あの女が戻ってきた。


「えっえっえぇ!? まだ爆発してないよ!?」
「爆発……?」

女はきょとんとした。

「この爆弾は爆発しませんよ? 中身を移すだけですから」

「それならよかった」

念のため、爆弾に耳を当ててみる。
時間を刻むような音は聞こえない。

やっぱりこの爆弾は爆発なんてしないんだ。

「預かってもらえてありがとうございました」

女は深々とお礼をすると去って行った。



「……はぁ、よかった」

女が帰ってひといきつくと、親に電話した。
命の危機にさらされて初めて、
今自分が一番すべきことが分かった気がする。

「父さん、母さん。今までありがとう」

『どうしたの急に。これから死ぬの?』

「死なないよ。ただ、感謝したくて」


電話を切ってベッドに滑り込む。
きっとあの女は俺に人生の価値をわからせてくれたんだな。

俺はそっと目を閉じだ。




チッチッチッ……。


俺の部屋に時計はない。
なのに、秒針が進む音が聞こえる。

「まさか……」

俺は自分の体に耳をすます。



チッチッチッ……。


中身を移すって……。
まさか俺が爆弾に……。