アンダーカレント
プロローグ
高度経済成長期の中、雨後の筍の様に乱立した団地の一つが、この「光ヶ丘団地」だった。
光ヶ丘なんて大層な名前が付いているけれども、要するに、ちょっとした高台にあって、それ以外に特にアピールできるようなポイントが何もなかっただけ、きっとそういう話だ。
ただ一つだけ違うのは、団地のすぐ傍に打ち捨てられた滑走路がある事だった。
滑走路と言っても何かの試験場跡地だったらしく、プロペラ機が着陸できるような数百メーター位の小ぶりの滑走路が一本と、倉庫のような建物がポツリと脇に立てられているだけの簡素なものだ。
当初は、そこに大型の商業施設が経つ予定だったらしい、が、結局そこには何もできなかった。
噂では、土壌が汚染されているおかげで、どこからも買い手がつかなかったとか、工事中に旧日本軍の幽霊が出たとか色々あったそうだけれども、本当のところはよくわからない。
ともかくそうして、滑走路と悪評だけが後に残った。
団地に住む子供たちはそこを遊び場にした。