「デリヘルの恋人たち(七)」
彼女が小さな声を漏らした。無視するでもなく聞き流す。きっと入れて欲しいということだろう。まんこを舐めるのをやめ、全身に手を這わせながら顔をまんこから少しずつ上へ上へとずらしながら舌を硬くして愛撫し、柔らかくしては強く吸い上げ、手を小さめの乳房を揉み上げて、喉元を舐め上げて唇に口を近づけながら、息を粗く語りかけた。
「いれてほしい」
「いれて」
「なにをいれてほしいの」
「いや、はずかしい」
「なに」
「オチンチン」
「もういちど」
「オチンチン」
「いれてほしい」
「じゃあ、いれるよ」
このまま入れる訳ではない。余程のことがない限り、ゴムはつけるのだ。この付ける間が〈白ける〉間であるとこの世ではよく言われるが、わたしはこの間が好きである。この間をどう愉しむかに賭けているのだ。女が付けてくれるのが前提であるが、特殊浴場の場合も、この付け方次第でセックスの力量が分かる。愛おしいく握りあげ、シャブリを重ね、一時も〈竿〉から口を離さない意志が感じられるとき、より一層陰茎は硬直し、興奮し、ゴムは付けやすくなる。
装着をしない人の場合、やはりその愉しみもなく、生で入れるというリスクを考えてしまう。一度余り若くはないヒトとの出会いの時、着けずに中出しをしたが、何故か嬉しさよりも悔恨が感じられた。陰茎がなにか悪いものに浸されたキュウリのような萎れ感があるのだった。ゴムの良さを改めて感じ、基本的に〈生+中出し〉はしないことをモットーとしているのだ。
彼女の付け方はまた違った愛らしさがある。入れる前に必ずまんこから滲み出た愛液を、そろえた指で軽く掬い取り、クリームを塗るように亀頭から陰茎にかけて擦りつけてくれる。エスティシャンのような、優しい力加減でゆっくり上下しながら、白けるだろうゴムまでの時間をその心地よさでもたせるかのように。その屹立した陰茎を見つめたまま、ゴムの袋を破り、一舐めして、しばし見つめる。この時、挿入願望はピークになるのだ。(つづく)
作品名:「デリヘルの恋人たち(七)」 作家名:佐崎 三郎