【ゴキブリ勇者】ラーメンを食べに行くだけの話。
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勇者「アイが食べ終わるまでもうちょっとかかるか。
タバコ吸ってきていいか?」
歴史学者「ああ。行ってらっしゃい」
勇者「先生も一緒に吸います?」
医者「そうだね。ちょっと行ってこようかな」
歴史学者「どうぞ。でも何本も吸わせないでくださいね。
先生もダメですよ」
医者「はは、分かったよ」
スタスタ
勇者「俺、最近メビウスに変えたんですよ。もうちょっと軽いの吸いたくて」
医者「メビウス?」
勇者「ああ、マイルドセブンのことです」
医者「あーそうか。名前が変わったんだっけ」
勇者「けっこう前のことですけどね」
医者「いや、だってメビウスなんて名前なんだか馴染めなくてさ。
俺も昔はマイルドセブン吸ってたから」
勇者「へー。でも、旅してた時は吸ってませんよね?」
医者「なんか変な話だけど、喫煙者だってこと自体忘れてたから。
最近思い出したらまた吸いたくなって」
勇者「あんまり吸っててもいいことないですけどね。
俺が言うのもなんですが」
医者「まぁね。あ、火貸してくれる?」
勇者「いいですよ。つけてあげましょうか?」
医者「いや、そんな両手で差し出さなくても。
おおげさだな」
勇者「なんとなくですよ。なんかこうしていられるのが嬉しいなと思って」
医者「はは、そうだね。俺も嬉しいかも」
フー
勇者「あ、そうだ。実はもう一人子供が産まれるんですよ」
医者「えっ!?なんでそんな大事なことをこのタイミングで……」
勇者「いやー、二人で話したかったんです。アイツは怒るだろうけど」
医者「……もしかしたら、奥さんも旦那さんの気持ちを理解して、なにも言わなかったんじゃない?」
勇者「うーん、かもしれませんね。
アイツは妙に鋭かったりするから」
医者「それで、どうしたの。なにかあった?」
勇者「いや、一人目が未熟児だったでしょう?
そのことをアイツがずっと気にしてて……。
今回もそうなりそうなんですよ」
医者「そうか……。彼女の状態じゃそうだよね」
勇者「俺もエリカも、もちろん二人目を楽しみにしてるんですが、アイツはちょっと怖がってて。
嬉しさ半分みたいな感じなんです」
医者「まぁ、なんていうか俺も医者のはしくれだし、出来るだけ助けにはなりたいけど……。
産婦人科じゃないからね」
勇者「いえ、そうじゃなくて。
ちょっと気にかけてもらえたら、エリカも楽かなと思いまして」
医者「そうか……。出来るだけ顔を出すようにするよ」
勇者「ありがとうございます。
俺ももっと休みをとれると良いんですが」
医者「社員はなかなかね。仕方ないよ」
勇者「そう言ってもらえると救われます。じゃあ、そろそろ戻りましょうか」
医者「ああ」
作品名:【ゴキブリ勇者】ラーメンを食べに行くだけの話。 作家名:オータ