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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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お母さん畑。たまにあいちゃん畑…。

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『あっ…、はい…。』
と小さく答えた。
でも次の日もそのまた次の日もお母さんは苗があることすら忘れていた。
決して置いていたのは根っこや茎を安定させるわけではない。
ただただ一言、忘れていただけのことだった。
それから一週間は忘れていた。
何故か水やりは忘れていなかった。
水やりを正解としているんじゃないかと私は疑いながら何も言わなかった。
そしていつも苗たちの所を通っているのに、一週間程して声が聞こえた。
『ことさんて、するするって言いながらしないですね。』
『そうそう、この前もするって言ったのにしなかったし…。』
『でも、ことさんてそういう人だから…。』
『気長に待ちましょう。』
と狭いカップの中の苗たちの雑談だった。
私はふと足を止めて振り返った。
サッと雑談が止まった。
私はまた歩き出した。
二、三歩進んだら、また雑談が聞こえた。
サッと振り返る私。
やっぱり会話は止まる。
首を傾げながら小股で二、三歩進む。
すると雑談が始まる。
行くふりをして振り返ったら、喋ろうとして止めた。
離れた場所にいたお母さんにすぐ報告。
『お母さん、苗たちがお母さんの事噂してるよ。植え替えしてくれないって。…今、“大丈夫ですよ~。ただ根っこが…、根っこが…狭いかなぁ~。…出来たら早めにお願いします。”だって。』
と伝えるとお母さんも罰が悪そうに、
『すみませーーーん。今日、必ずしま~す。』
と声をかけた。
すると苗たちの誰かが、
『ことさんのしますはあてにしていませ~ん。今日はしないと思いま~す。』
と言うので、お母さんが小さな声で、
『あっ、よくお分かりで…。でも今日必ずします…。』
と言った。
そしてしなかった…。
しなかった理由…、
『あっ、忘れてた…。』
とのことでした。
苗たちも分かっているので、
『ねっ、いつものことです。あっ、でも根っこが…狭いかも…。』
と言った。
そしてついにその次の日にお母さんはいつの間にか植え替えていた。
通りで苗たちの会話が聞こえなかったわけだ!!

お母さんは知り合いに会う度に、畑デビューしたことを伝えていた。
その中には畑をやり続けている人もいたりするので、苗がたくさん余っているからとお母さんに伝えると、お母さんはすぐに植える場所がまだあるからと、
『いる~っ!!』
と答える。
なので、私が帰って来ているたった一ヶ月の間に、サツマイモの苗を五十個、レタスの苗を十個くらいと増えていく…。
誰がこの量を食べきれるのだろうかと私は考える。
お母さんに聞くと、
『近所さんとか友達にあげる。』
という回答。
案の定だったけど、自分で食べんのかい~っとやっぱり突っ込んだ。
そしたら、
『こんな量一人で食べきれるわけないでしょっ!!』
と逆切れ…。
私は思った。
私がお母さんの家に帰って来て買った苗は全て私がお金を出している…と…。
畑の道具も新しく買った物は私が出している…と…。
一応お母さんに言ってみた。
『苗のお金って私が出したって忘れてない?!』
私は伺いながら聞いた。
お母さんがバツが悪かった態度を出したけど、それも一瞬だけで、
『お母さんはお金がないの。』
とその一言が冷たい視線で帰って来た。
これは開き直ったのか…どういうことか…私には分からなかった…。

私だけじゃなくお母さんの友達も口を揃えて言っている言葉がある。
『どうせジャングルになる。』
と…。
もうすでにその一歩を踏み出していると私は思う。
あいちゃん畑には数える程の草しか生えていない。
毎日、私は草むしりをしているから…。
お母さん畑は茶色の絨毯と言うより緑の絨毯と言った方が良いかもしれない。
私としてはお金を出したかもしれないが、畑というものを体験できた一ヶ月となったので良かった。
そして知ったことがある。
畑は小さい方が良いと…。

そして私はもう少ししたら旦那さんの元へと帰る。
その時にお母さんにあいちゃん畑を譲り渡し、そこはあいちゃん畑からお母さん畑へとなるのだ。
今年の秋にどうなっているかがある意味楽しみだ。