『 どこかにある世界 』
海も山も川も太陽もすべてあり、何もかもが豊富に満ちているのです。
何を口にしても虚しく、何を口にしても素晴らしいとは、あの世界のことを言っているのだと、私は思うようになりました。
そこへ行くには、ある条件が必要だというので誰もが志願したからといって、叶うという訳ではないのです。時間を掛けて学び、生活から人間そのものを知る者だけがその世界で暮らしていたということです。
私がその国に居たのは、丁度、2つほど前の記憶になります。しかし、それは見た途端に消え、無いはずの場所に現れる国だったのではないかと思うのです。
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「だけど、あの国ほどいい国は無かったよ」
「素晴らしい国というのは、損ばかりだ」
「皆が訪れ、蹴散らしてしまう」
「新しい国を探しに、旅に出ようと考えている」
「どこかにある国が、あるらしいんだが」
「いつの時代も常に、どこかにある国があるんだ」
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素晴らしい国を見た者は皆、それを二度とは探さないそうです。
記憶の中にある国だけが、永遠に美しく、滅び行く時代に逆らわずに済むということです。
どこかにある国がどこかにある世界なのかも知れない、と私は考えています。その国があることを知らない人をどの様に作るのか、と貴方は言うかも知れませんが、地図にないものは概念上存在しないのです。
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「素晴らしい国を探し続けている」
「今日ある国が素晴らしいとしても」
「あの世界以上に素晴らしい国はないよ」
作品名:『 どこかにある世界 』 作家名:みゅーずりん仮名