「デリヘルの恋人たち(四)」
自分のやり方が特に決まっているわけではないが、暗黙の了解のように女体への攻め方があるようにも思うのだ。相手によっても変わってくるはずだが、それでもある程度のことは同じやり方で最終形にいけるのである。彼女とのセックスも身体を重ねるうちに一つのパターンが生まれた。恥ずかしい行為に興奮することを知り、この職業を選んでいるのはやはりセックスそのものが好きだからだと、彼女の性器をはじめ、肉のすべてが語っているのである。
まず、キスは軽い愛撫はベッドに入る前に終え、バスではダイレクトな接触をしながらの抑制に興奮し、ベッドでは我慢していた性器への愛撫、指と口を使って時間をかける。その間合いでその日の攻め方が左右するのである。彼女の「まんこ」は美しい。使い込んでいる形跡が余り見られないので、間近での指入れや舌舐めがいつも新鮮に感じ、あたかも初めての感じがする。溝の中をゆっくり這い回るように舌を動かし、息を吹きかけながら大きく割れ目を広げる。尻の穴も丸見えになり、その視線を強く送りながら、囁くように「よくみえるよ」と声に出す。
陰茎を咥え、舐め上げ、握り締めながらも唇の隙間から、小さく「いや」という声以前の声が聞こえる。このお互いのリズムをうまい具合に合わせながら、血液が熱く流れて、体中が敏感になり、エクスタシーを望みつつ、焦らし、邁進する行為が続くのである。「まんこ」は濡れている。「チンチン」も硬くなっている69の形のまま円を描くように、キャタピラがゆっくりと前に進むように、快感を獲得していくのである。
それが「序」である。この69の時間を本来は一番たっぷり取りたいと思う。しかし時間は限られている。50分という時間を有効に使うのがデリヘルの醍醐味でもあるのだ。きょうの彼女はいつものようにどんどん淫らな匂いを出している。逢瀬の度にそうなっているのだが、それを抑えようとすることで益々、愛液や喘ぎ声が増える。この逆の動きが何か「ホンモノ」感があると思うのだ。尻の穴に指をあてがい、入れる素振りをしながら、「ここは」と言えば必ず「いや」と反応する。この「いや」を如何に言わせるかが自分の課せられた使命と言っても過言ではない。
汗が薄らと滲み出した。二人は離れないように向きを変え、枕の上で並んで見つめ合った。指は握り、または挿入されてはいる。キスをしながら片手は乳房を摩り、乳首の周りを這い回り、時折摘まみ、左右に振り、唇から顎、喉、胸、乳首へと舌を押し付け、軽く滑らせながら送っては戻し、快感が途切れないように祈りながら、より激しい淫行為を続けていくのであった。皮かむりのクリトリスは、膨張し、薄いピンクの真珠になった。(つづく)
作品名:「デリヘルの恋人たち(四)」 作家名:佐崎 三郎