ゴキブリ勇者・カズキとマリ編
ーおまけ・その2ー
魔物「あれ……アキコさん」
アキコ「あら、やっと来たのね。私待ちくたびれちゃった」
魔物「まさか……ずっと待っててくれたんですか?」
アキコ「そーよ。お友だちのシンゴさんと話したくて」
シンゴ「そうですか。光栄ですね」
アキコ「ほら、シンゴさんから貰ったブローチ、ちゃんとつけてるわよ。
マリがこっそりお墓に供えてくれたの」
シンゴ「ありがとうございます。とても嬉しいですよ」
アキコ「ふふ、アナタも変わらないわね。そんなに緊張しなくていいのよ?」
シンゴ「いえ……私はずっとアナタに片思いしてたんですよ?
知ってるくせに、意地悪ですね」
アキコ「だって、私にはアナタの気持ちに答える権利はないから。
……私の旦那のせいで、アナタはタケオに捕まったんだもの」
シンゴ「それでも、私はアナタのことが好きでしたよ。
もちろん、今でも好きです」
アキコ「ありがとう。嬉しいわ」
シンゴ「そういえば、マリちゃんが結婚したのは知ってますか?
子供も二人もいるんですよ」
アキコ「ええ、ずっと見てたもの。マリのことも、アナタのことも」
シンゴ「だから、意地悪しないで下さい。
勘違いしてしまいます」
アキコ「うふふ、ごめんね。でも本当のことだから。
アナタが私の孫を嬉しそうに抱いてるのも、ちゃんと見てたわよ。
ずっと離さないで抱っこして、マリを困らせてたのもね」
シンゴ「あはは……あまりにも嬉しかったのでつい。申し訳ありません」
アキコ「ううん、アナタのおかげで、マリは幸せになれました。
そばにいてくれてありがとう」
シンゴ「いえ……私よりカズキ君に言った方が良いですよ」
アキコ「もちろん。だから、もう少しここで待たないとね。
それまで一緒にお茶しない?」
シンゴ「全く……仕方ありませんね。
でも、私は紅茶は飲めませんよ」
アキコ「大丈夫、ちゃんとコーヒーを用意してるから。
ブラックだったわよね?」
シンゴ「ええ。ありがとうございます」
アキコ「でも、その前に波打ち際を散歩なんてどうかしら。
ここの海、本当に綺麗なのよ」
シンゴ「そうですね、行きましょう」
スタスタ
シンゴ「アキコさん」
アキコ「なあに?」
シンゴ「私は今幸せですよ。
最期にマリちゃんとも話せたし、アナタとも話せているし」
アキコ「ふふ、私も幸せよ。アナタとはゆっくり話をしたかったから」
シンゴ「そうですか。とても光栄です」
アキコ「じゃあ、コーヒー飲みましょうか。私もなんだかコーヒー飲みたくなっちゃった」
シンゴ「ええ」
スタスタ
アキコ「あら?」
マリ「……!」
アキコ「あらまぁ、もうそんな時間なの?」
マリ「お母さん……!」
アキコ「よく来たわね。アナタのこと待ってたのよ」
マリ「お母さん、私……」
アキコ「マリ、幸せに生きた?」
マリ「……うん!」
アキコ「じゃあ良かったわ。それじゃあカズキ君も三人で待ちましょうか」
シンゴ「こんにちは、マリちゃん」
マリ「あ!久しぶりねー。いや、久しぶりっていうのはダメ?」
シンゴ「私からしたら、さっきのことなんですけどね。
マリちゃんが幸せそうで良かったです」
マリ「まぁね。アンタも幸せそうよ」
シンゴ「えっ!」
アキコ「あらあら。あんまり意地悪しちゃダメよ」
シンゴ「それはアキコさんもですけどね」
アキコ「ふふ、ごめんなさいね」
カズキ「おーい!」
マリ「あ、カズキ」
カズキ「あ、じゃなくて!
あれ?なんで俺子供の格好してんだ?」
マリ「さぁね。まぁ、いいじゃん。
髪の毛がふさふさでさ」
カズキ「やめてよー。結構傷ついてたんだから」
アキコ「どうしましょ。全員集まっちゃったわね。
こうなったら孫も待っちゃおうかな」
マリ「えー?私子供の姿だからあんまり会いたくないよ」
アキコ「いいじゃないの。みんなでお茶したかったのよ。
お母さんずっと一人で寂しかったんだから」
マリ「まー、仕方ないか。カズキ、お茶入れなさい」
カズキ「えー。俺死んでもこき使われんのかよ……」
アキコ「あらあら。仲が良さそうでよかったわ」
マリ「いやーでも、綺麗なとこねー。ちょっと泳いでこようかしら」
カズキ「ダメだよ。この時期じゃクラゲが……」
マリ「アンタバカなの?いるわけないでしょクラゲなんて」
シンゴ「あはは、やっぱり二人は面白いね。本当に私は幸せだなぁ」
マリ「私もそこそこ幸せよ。死んでっけど」
カズキ「俺も幸せです。お母さんもあのときはありがとうございました」
アキコ「いえいえー。私も助かったわ。
本当に幸せねー」
ザザー
「ママー!」
マリ「ゲッ、私よりさらに年下なのね」
アキコ「ほら、行ってあげなさい。
私にも抱っこさせてね?」
マリ「もちろん、ちょっと待っててね」
アキコ「マリ」
マリ「なに?」
アキコ「アナタのこと大好きよ。愛してる」
マリ「……ありがと!じゃー連れてくるわ」
カズキ「俺もマリのこと愛してるからな!聞いてる?」
マリ「はいはい、お母さんの次に愛してるわ」
カズキ「くそーっ、やっぱり二番か……」
「ママー……」
マリ「はいはい、バカなパパはほっときましょーねー」
タタッ
ーおわりー
作品名:ゴキブリ勇者・カズキとマリ編 作家名:オータ