サヨナラ、ヴィーナス。
晴れのち、大雨。
キミからの言葉の罠にまんまと引っかかった僕は
夜中に家を飛び出した。
息が上がる。
まるで心臓が僕の身体中を支配したかのように感じるくらい
僕はキミのことしか考えられなくなっていた。
昔、よく学校帰りにキミと寄っていた公園で待ち合わせをした。
僕が公園に来た時にはもうすでに1時を回っていた。
履いていたサンダルを脱ぎ捨て
ベンチに座り静かに目を瞑った。
夜の空気に溶けて消えてしまいたい、と思った。
なぜキミが急に会いたいと言ったのかも、
もう僕たちの間には今まで曖昧だった関係がなくなり
ハッキリと「知人」という代名詞が貼りついたその訳も
きっと彼女にとってはどうでもいいことなのだと思う。
僕にとって大事なことは、キミにとっての無価値なもの
「浸ってんなあ、じぶん。」
明け方になっても、キミは来なかった。
作品名:サヨナラ、ヴィーナス。 作家名:melco.