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琥珀ちずる
琥珀ちずる
novelistID. 30836
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ふたつ星

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 「今夜、星、見に行かないか」
学校帰り、隣を歩いていた彩斗が、不意にそう言った。
「星?なんでまた」
僕は、頭に疑問符を浮かべつつ、疑問を投げた。
「流星郡が見えるんだってさ。ほら、お前、水瓶座だろ」
なるほど、そういうことか。十二星座の流星群とか、なかなかロマンチックなことをするな。て、おい待て。
「他に、誰か一緒に行ったりはしないのか。その、女子とか」
「女の子を、そんな遅い時間に連れ出すのは。いくら何でも親御さんが許さないんじゃないか。しかも、相手は男だし」
「何が悲しくて、男同士で星なんか見に行かなきゃならないんだよ」
それは、例えば彼女とかできたら行くものであって、それか、一世一代の告白の時とか。
その時に、先の十二星座の話題から、『俺たち付き合わないか』なんて言われたら、女子は一発でコロリだ。しかし残念。僕はどう見たって男だ。男子高校生だ。
「お前、その気があったのか。僕は知らなかったぞ」
確かに、彩斗は色白だし、二重で大きな目をしている。女子も羨む容姿をしているから、今流行りの女装なんかしたら、すれ違う男が振り返ることうけあいだ。ちなみに、これは僕個人の趣味ではなく、そういう男同士的な趣味がある、姉貴の意見だ。彼女曰く
『彩斗くんは、絶対に美少女になるよ!祐介、私が見繕うから、女装させて一緒に街を歩いて来なさいよ』
といって、ファッション誌を出して来た始末。もちろん僕は、全力で拒否らせてもらった。そんなわけで、彩斗はそれくらいの美少年なわけだ。もっと言えば、学校内にファンクラブが存在する。こいつも、僕となんか一緒にいないで、もっと社交的になればいいのに。そしたら、彼女の一人くらいは。とか本気で心配してしまっている。僕だって彼女なんてこのかたできたこともないのに。くそう。
「祐介。何だ、表情がだんだん曇っているぞ。そんなに嫌なのか。俺と一緒に星見るの」
そりゃあな、自分よりも異性にモテモテで、其のくせ彼女のひとりも作らない友人が隣にいれば、多少はそういう考えをすることもあるって。て違う、そういう話じゃない。
「嫌というか。やっぱり、そこは気になっている女子を誘って、一緒に星見ながら告白の一つでもかますものじゃないのか。お前だったら、誰でも即オーケーだろ」
我ながらよく言ったとおもったのだが。彩斗がすこしぽかんとしたあと、みるみる拗ねた表情になったかと思うと。少し上目遣いになりつつ
「なあ、本当に、ダメなのか?」
と情けない声を上げてきた。なんだよ、この女が本気で男を落とす的な仕草は。不覚にもときめくところだったじゃないか。と溜息を吐きつつ。
「わかったよ。何時集合なんだ」
と言っていたのだった。

作品名:ふたつ星 作家名:琥珀ちずる