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黒角未 梗概
黒角未 梗概
novelistID. 55965
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モノトナス

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僕は、何の躊躇いもなくイージを選択した。
世界の動きは緩やかになり、僕は彼らに比べ
身体的能力も頭脳も高いものとなった。
つまり人生は楽になり、へっちゃらであった。
周りの人間が皆、バカに見える。
この素晴らしい優越感は変えられるものはない。
そして、僕は頭が良くなったんだし、
一番時間の制限が受けづらい小説家になった。
名誉もお金も女も入ってくるだろう。
最高だ、俺。人生の神になった気分だ。

ところが、名誉も金も女もいるのに、
なぜか俺の本は理解されない、売れるのだが。
なぜだ、畜生。
読者の野郎はなんて言ってんだ。
俺は神だ。
どんなものを書いても素晴らしいに決まっている。
そこからが苦悩の生活だった。
この世に置いて人類をひれ伏すのは簡単だったが
自分の読者が、仰天する事はなかった。
ファンもよくわからない感想ばかり述べてくる変な奴。
お、可笑しいだろ。俺の書いた作品だぞ。
この可愛い女の子だって、設定だってイかしてんだろう?
萌えろよ! ここにさ!
そこじゃない!そんなどうでもいいとこじゃないんだ!
サブキャラクターの地味な奴なんてどうでもいい!
メインのこの子が可愛いんだろう!
どうして、誰も分からないんだ。
お、面白いってなんだよ! ここは芸術的な場面だ。
まさか、本当に誰も俺の作品の良さが……わから、ない、のか。
そして、新作が出版された次の週のファンレターを読み漁る。
その中から未だかつてない程の作品の理解者がいた。
素晴らしいぞ、名前はなんて言うんだ、こいつは!
宛名っ!宛名はどこだ!
た、たきがわ……あさこ。
その名前を知った時、まるで彼女を既に知っているような気になった。
それからは、来る日も来る日も彼女とメールをした。
彼女は僕の作品をとても愛してくれていた。
メールが来るたびに僕の心は躍った。
樹海の中にいて、永遠に誰も僕を気づいてくれないのかなと思ってたのに、
必死に眩い光を灯しながら探しに来てくれたかのようだった。
僕は彼女のファンレターが読みたくて、僕を褒めてほしくて、
もっともっと作品を書きたくなった。
すると、彼女の僕に対する作品への熱中度も上がっていった。
僕の作品が人気を博さないのはおかしいって。
でも、僕はもう人気者じゃなくても売れなくても良いって思った。
だって、これだけ僕の作品を愛してくれる人がいるんだから。
だから僕は、彼女と出会う事にした。
ファンと会う事は作家として禁断だと思っていたから
してこなかったけど、小説家の神様に土下座して謝って、
彼女と会う事に決めたんだ。
久々に僕は外を出た。
僕は荒廃した砂漠の夜風にあたりながら彼女と出会いたくて
終京を選んだ。
当り一面が砂漠で覆われていて地平線の先まで砂しか無かった。
僕が着くのとほぼ同じくらいに彼女はすでに居た。
ここに来る奴なんて、ほんと芸術家くらいだろう。
それぐらい、世界の終わりを感じさせるし、
どことなく物悲しさがある。
それでも僕にはそれがたまらなく好きだった。
「先生、会いたかったです」
彼女の第一声に僕の胸は高鳴った。
「こんな退廃した世界で、君に会えてよかった」
「私もです。あなたの作品だけが私にとっての励みだった」
「そっか……そっか……」
涙が出てきた。こんなに小説を書いていて嬉しかった事が
他にあるだろうか。
孤独の中に彼女という光があった。
こんな世の中でも僕は幸せだ。
暖かい風が僕らを吹き付ける。
夜空には、虹と多色の星達、そして真っ青な月が
僕らを祝福しているようだ。
これこそが僕の世界だと思える時だった。
作品名:モノトナス 作家名:黒角未 梗概