『 ミニが多い国 』
私が散歩をしながら気付いたことであるが、この国にはミニが多い。
それを見てもどれを見ても、ミニなのである。
コンビニエンスストアに入って、商品棚を見回す。
棚には、ぴちっとミニサイズの袋が隙間なく並んでいる。
目を凝らすと、小さな字で材料やら注意書きが書いてある。
それから外へ出て、道端の小さな草花に目をやる。
小さいのである。
なんとなく小さな気持ちになって、ドアを開ける。
用意された食事に、小さなホタテ貝のようなものが乗っている。
小さいけれど、少し豪勢な気持ちになる。
一口食べた時、コツリと歯に何か当たった気がして、唇に手をやる。
指先に、白く小さなビーズの様な物が乗っていた。
「ねぇ、これ、真珠なんじゃない?」
「そんな訳ないでしょ」
真珠になりそびれたやつを私は部屋に持ち帰り、箱の中に放り入れた。
あれは、私が食べなければ真珠を作り続けたに違いないのだった。
ミニもいいけれども、大きく育てる必要があったのではないか。
私は、少しきつめの上着を古着回収袋に入れ、溜息をついた。
脱皮を怖れるやつに、ビックチャンスは来ないのだ。
ペンを取り出し、紙に目標を書く。
あれは絶対に、真珠になる筈だったんだ。
お金持ちの首回りを飾るのもいいが、君を小説に書いた奴がいるので、きっと許してくれるに違いない。
作品名:『 ミニが多い国 』 作家名:みゅーずりん仮名