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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『 水晶の成仏 』

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水晶玉があまりにも人間じみたことを言ったので、私は煩わしくなりました。
その様な気持ちを抱くこと自体、人として酷いのではないかと思い、悩みを箱に閉じ込めて
蓋をしました。

それから約1年が経ち、私はその水晶玉を太陽に当てることにしました。
中にいるそれが凍り付いたまま、動くことが無くなっていたからです。
私は心の中で詫びながら、それを台座に乗せ、そこに置いたのです。

夜中になって、水晶玉を台座ごと机の上に移すといつものようにそれは周囲を吸収して光っていました。寂しげな闇の中のその色を見て、私の胸は痛みました。
なかなか眠りにつけずに天井を眺めていると、どこからか笑い声と話し声が聞こえてきました。叫び続ける魂をそこに置いたまま、水晶玉は飛んだのだと思います。

朝、水晶玉はそこにありました。透明な風景を解釈して映し出す姿は、まるで変わっていませんでした。その横に、金色と銀色の混合色である糸が落ちていました。

いつも側にいたのに、閉じ込められた空間で過ごした糸を拾い上げ、棚に置きました。
ああ、あの凍てついた魂はこれになったんだ。

すこし不思議な気がしましたが、それは私の胃痛と共に去って行ったのだと思いました。水晶の思いは溶け、成仏したのだと思うことにし、私は、ほっと息を吐き出しました。

水晶玉は透度を上げ、台座の上に座っています。いつかまた、私の命を救ってくれるのではないか、と胃薬を片手に私はそれを見たのです。