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第7章 長篠の信実

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長篠の戦い、一般的に知られている長篠の戦いは、武田の騎馬隊対織田の鉄砲。
馬防柵の中から騎馬隊の突撃を待って騎馬隊が近くまできたら鉄砲鉄砲の一斉攻撃。
騎馬隊は火縄銃の準備には時間がかかるからその間に突撃。
しかし三段に構えた鉄砲隊は撃ち終わった鉄砲隊が3列目に移動2列目にいた隊が一番前の列にきて撃ついわゆるローテーション方式!これには為すすべなく武田軍壊滅。織田軍の圧勝である。
ただ考えて頂きたい、ずっと待ち構えている鉄砲隊に突っ込んだりするだろうか?
同じ戦法を使い続けて勝てるのだろうか?
そして一番の問題点は武田に騎馬隊という組織がなかったという事である。
当時の馬は木曽馬というポニーみたいな小さな馬で主に荷車を引くために使われていた。
当時の平均身長は150㎝くらいと言われているがそれでも20㎏近い甲冑を来ている。
体重は50㎏だとしても+20㎏で少なくとも70㎏はあるそんな人間を乗せて走る事は出来ない。
武田の騎馬隊とは迅速に物資を運ぶ輸送部隊の事だったのである。
当時の輸送に馬は欠かせない、現代みたいに車などないからである。
戦をするには物資つまり武器や食料、具足など色々とある。
武田軍が強かった理由はこの物資の移動に長けていて、戦場でいち速く戦える準備が出来たからである。
現代でも通じる段取り8割というやつである。
つまり武田の騎馬隊が戦場を荒らし回る、最強軍団はデマである。
一方の織田はというと鉄砲隊3列というのには無理がある。
何故かそれは、そんな至近距離で玉込めをしてもし暴発したら味方に被害がでてしまう。
最小限の犠牲で戦う信長がそんなリスキーな事をするだろうか?
答えは一つその必要はないのである。
そもそもこの戦い、数で圧倒的有利なのは信長のほうである。
おおよその数だが織田徳川軍30000に対して武田の兵は多く見積もっても15000!
その数は約二倍!これが攻城戦や今川義元を破ったときのような本陣だけを攻撃したなら充分逆転はありえるだがこの戦いは正面に向き合った両軍の戦いである。
しかも前にも述べたとおり戦と言っても前衛同士の小競り合いに始まり。有利な方が前に出ていく陣取り合戦である。
有名な川中島の戦いですら本格的にやりあったのは一回しかない。
この事から考えてもお互いの情報に誤りがあるのだ。
ではなぜあれほど武田軍に犠牲者が出たのか?
それがこの章のポイントである。
長々としゃべりましたがこれからが本題です。今までを踏まえてこの先を読んで頂くと面白いと思います。
信長軍に挑む武田軍。
武田軍はこの時2つに割れていた。
信玄から仕える古参の重臣たちと勝頼の側近や小姓から家臣になったものである。
信玄から仕える重臣たちは冷静沈着で戦況を読むプロで、戦になると力を発揮するタイプ。
勝頼に仕える家臣達は経験が浅く、若さに任せ勢いで押し通すタイプ。
それに加え勝頼は父信玄と比べられるのを嫌い自分の実績を残したいと思っていた。
その云わば両極端な二つのグループをもつ武田家がまとまる訳がなかった。
長篠の戦いの時まさにそれで、信長の力、勢い、戦の上手さをわかっていた古参の重臣たちは『今はまだ信長と戦う時ではないもっと地盤を固めてから挑むひべし』と主調する。
一方の勝頼側は『今までの戦で連戦連勝信長など恐るるにたらず』と、
たしかに勝頼軍は今まで連戦連勝であった、が強い相手や大人数の敵を相手にしての連勝では ない。城一つ500人ほどの所に6000や7000の兵で勝った戦いである。
いわば次元が違うのである。でも今は勝頼が当主である。勝頼が決めた事が武田家のすべてである。ここで古参の重臣たちはある覚悟を決める。
『俺達がいても意味がないいっそ戦場で死のう』と、
そうこの戦いは武田の新旧交代戦でもあった。そのため、武田軍は玉砕覚悟で猛烈に攻めて来たわけじゃなく死ぬために戦に来たのだ。
ここまでくればお分かりだろう。この戦いの注目ポイントは『武田の騎馬隊対織田の鉄砲』ではなく、武田信玄の家臣対武田勝頼の家臣である。
ただ歴史的に面白くないため誤って伝わったのである。
信玄の重臣たちは死に花咲かせるため信長軍と必死に戦ったがそもそも戦意がない武田軍は織田徳川の総攻撃により次々に倒され、武田軍壊滅、勝頼は逃走する。
実質古参の重臣たちを失った武田軍はここに幕を閉じるのである。
信長は残りの武田の残党を息子信忠に任せ安土に戻り、残すは毛利や長宗我部と言った西の大名達と戦っていく事になるのである。

作品名:第7章 長篠の信実 作家名:緑茶