ファースト・ノート あとがき
ようやく、最終話までアップすることができました。
あとがきなど大層なものを、と思われるかもしれませんが、私自身がこの物語に区切りをつけるために、書かせていただくことにしました。
この物語を今の形に持ってくるまでに、8年もかかってしまいました。
書き始めた頃、まだ0歳児だった長男は、小学三年生になりました。
というのも、大学のゼミで小説を書き始めた私は、卒業して以来、小説を読み合う仲間や、添削してくださる先生のもとへ会いに行くことができなくなりました。
家事と育児に追われるうちに次男が生まれ、父が闘病生活に入りました。
物語に登場する、「家に帰らないだめ親父」である高村徹治は、自分の父をモデルにした部分もあったのですが、その父が肺がんにおかされ、帰らぬ人になってしまうとは思いもしませんでした。
当然のごとく、続きがかけなくなってしまいました。
その後、設定を大幅に変更して、ドラマー深町晃太郎を追加し、何とか書き始めたのですが、一年後には母も急病で亡くなってしまいました。
もう書けません。全然。両親を亡くしてなお、書き続ける気力は全くわいてくれませんでした。
しかしそれと同時に、たくさんの命の誕生も見てきました。
年賀状を通じて、かつての恩師と再会し、途中まで書いたものを添削していただくことで、文学賞への応募をめざし何とか最後まで書ききったのですが、当然のように一次落選でした。
その後、すこし生活も落ち着きを取り戻し、誰かに読んでほしいという思いから、再び書きなおし始めました。
もともとあった要と初音が幼なじみだという設定を取り払い、友人の芽衣菜を加え、結末も180度変えて、冒頭から全て書き直しました。
それがここに掲載させていただいている『ファースト・ノート』です。
この物語には、多くの人の死があります。身近な人の死を知らなかった学生当時の私が読めば「うわーこんだけ死んだらしんどくて読めんわ」と思っていたに違いありません。
しかし、たくさんの命の誕生と終わりを見続けてきた今、やはりこれだけのことを書かずにはいられませんでした。
消え去ろうとしている命のそばで、新しい命が生まれようとしている――
このことは、赤ん坊の次男を抱いて父の見舞いに行ったとき、強く感じたことでした。
ギタリストの話が書きたい、という単純な思いから始まったこの物語は、紆余曲折を経て、このような形でこのサイトに掲載することができました。
しばらくは、修正のためにたびたびアップし直すこともありますが、大幅な変更はもうないと思います。
最後までお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。
最後まで読んで下さった皆様に、感謝と敬意をこめて。
渡邉めぐみ
作品名:ファースト・ノート あとがき 作家名:わたなべめぐみ