『 護り人 』
扉の前に立ち、ノックをしようとした瞬間のことです。
腹の奥底からの笑い声が天井に響き、私は仰天しました。
急いでその場から逃げ出した私を、声は追っては来ませんでした。
外へ出、町の空気と灯りを見ると、今のことは嘘のような気がしてきました。
しかし、戻らなければなりません。
戻ると、今度は空のエレベータが上へ上がったきり、戻ってきません。
私は不安になり、画面を覗き込みました。
すると、そこに男人が映っていたのです。
その脇には鹿が座っているようでした。
画面に映る景色に向かって走りましたが、そこには何もありませんでした。
戻ると先程の画面には、ただ、入り口と靴箱が映っているばかりでした。
画面の中にいた男人が笑い声を立てた可能性もありますが、私は護り人だった
と思うことにしました。
他に証人はなく、伝える人も居ませんでしたが、私が見たのは七福神だったのでした。
この国では、恵比寿さまというそうです。