信号をわたるだけ。
言葉は口から出さずとも
頭の中をぐるぐるめぐる。
出掛けてからの2時間ほど、
わたしはカフェオレ以外のために
口を開いてはいない。
一日が終わり、
暗くなればなるほど
わたしの口は不必要になる。
コンビニの明かりが
視界を眩しく照らしはじめた。
わたしの口は
必要以上に大きく酸素を吸い込んだ。
チカチカする光に合わせて、
さっきまでよりも
大きく体重をペダルに乗せる。
追い越した人が
かけて行く音がうしろから聞こえる。
その音で遠くに出かけていたわたしの
「気」は一気に戻ってきたのだった。
目の前には信号を渡ろうともせずに
じっと左を見つめる人。
金髪がさらりと生温い風に乗った。
すれ違いざまに
信号機の赤が横目にうつる。
私は段差をこえて。
今日は少し大きめに右に曲がった。