33粒のやまぶどう (短編物語集)
高瀬川亮平へ
随分とご無沙汰ですが、元気にしてますか?
ところで、先月、義男が他界しました。
その生命保険の受取人は、故人の遺言で亮平です。
受け取ってください。
母より
何年ぶりかに届いた母からの手紙、実に簡潔に書かれてあった。
「そうか、ついに義男(よしお)は亡くなったか」
亮平(りょうへい)は忸怩(じくじ)たる思いにもなったが、それにしてもおかしなことだ。
というのも、義男は亮平の父ではない。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊