33粒のやまぶどう (短編物語集)
昭和7年(1932年)の秋、寛(ひろし)と志(し)ょうは鞍馬寺を訪ねた。もう幾度も来ているが、今回は鞍馬の門前町から入山し、貴船(きぶね)へと下りた。
俗界から浄域への結界、その仁王門を超え、清少納言が「近うて遠きもの、くらまのつづらおりといふ道」と記した九十九折(つづらお)り参道を登った。
そして本殿金堂へと。ここは毘沙門天王、千手観世音菩薩、護法魔王尊の三身一体が本尊であり、尊天と称されている。尊天はこの宇宙のすべてを生かすエネルギー、森羅万象を支配する力だ。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊