33粒のやまぶどう (短編物語集)
母子家庭で育った善行(よしゆき)、少年時代は貧しかった。その貧乏から抜け出すために、いや、母に楽な暮らしをと田舎を飛び出し、都会で働き始めた。
しかし世間はそう甘くはなかった。どれだけ身を粉にして働いても貯金は易々とは貯まらない。それが辛抱できず、悪の道へと。
元々甘いマスクにスラリと背が高い。まず善行は行き遅れた女性を狙って、「君の一生、僕に守らせてください」、こんな殺し文句で結婚詐欺に手を染めた。しかし、善行の金銭欲はそれだけでは終わらなかった。次はオレオレ詐欺へと走った。
だが個人でやっていても効率が悪い。やはり組織を組まないと大金を手にすることはできない。そこで悪友たちを誘い、劇場型の振り込め詐欺軍団を結成させた。まだ20歳そこそこだが、これを束ねる悪の権化と成り上がったのだ。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊