33粒のやまぶどう (短編物語集)
「未来は終点のない山手線外回りにある。だから永遠なのよ」
こんな結論を下した亜希に、耕介は逆らうつもりはない。だがちょっと不満で、もっと生活感のある近未来を見てみたいなあ、と漏らした。
「じゃあ、おまけで、3年先の品川へ行ってみましょ」と再乗車する。そしてそこで二人は信じられない光景を見てしまう。
大きな荷物を抱えた男と、赤ん坊を抱いた女、きっと夫婦なのだろう、「初孫に会えるの、お義父さんは楽しみにしてらっしゃるわ」、「ああ、亜希、これから田舎で、三人仲良く暮らそう」と会話しながら新幹線ホームへと足早に去って行った。
こんな家族の情景を目の当たりにした耕介、背筋をキリリと伸ばす。
「品川駅の、この僕らの三年先の未来を現実にするため、亜希さん、本日よりお付き合いください!」
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊