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Dracula ~ドラキュラとなった献血男

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登場人物
浦戸慶太/ドラキュラ
森下幻想
森下由香里/ドラキュラの精霊

浦戸 どうも、ドラキュラです。ご覧のようになってしまいました。僕は、いたって普通の青年です。でも、僕は毎日、血液を吸っているかと言うと、そうではありません。ご存じない方も多いと思います。実は、ドラキュラのモデルは人間なのです。
森下 お兄さん。献血して行かない?豪華プレゼントも用意してあるけど。
浦戸 献血ですか?そうですね。暫くやっていませんね。よし。分かりました。やりましょう。
幻想 ここは、とある公園である。ちゃんとした献血センターでも移動献血車でもない。こんな問題のある場所で献血するこの若者の気が知れないな。
浦戸 なんだとお前、文句有んのか!
森下 どうかなさいましたか?
浦戸 そこに誰かいたんだよ。あぁ、いやなんでもない。俺の血が騒いだだけだ。
森下 献血の前に血が騒ぐと、正常値が出ませんから、一旦落ち着きましょうよ。ねぇほら、リラックスして下さい。お話しましょう。
浦戸 そうですね。お姉さんは、ここで何をしているんですか?
森下 わ、私ですか?うーんと。この絶望の都を改善するため、日夜奮闘している、影の組織の一員として人々の血液を集める活動をしている。
浦戸 えっ!何ですかそれ。ぼ、僕を殺そうってんですか?
森下 嘘でーす。そんなことあるわけないじゃないですか。
浦戸 僕を騙したんですね。逆に心拍数乱れましたよ。
森下 ごめんなさい。もう少し話しましょうか。今度は、嘘はつきませんから。浦戸さんって何してるの?
浦戸 僕ですか?普通の高校生ですよ。
森下 高校生?良いなぁ。羨ましいよ。私、頑張って医学部合格したんだけど、高校時代、本当に青春っていう生活を送っていなかったからさ。
浦戸 医学部ですか?凄いじゃないですか。
森下 ありがとう。でももう一度、高校時代に戻りたいって思う。学校の先生ってよく言うよね。高校時代にもっと勉強しときゃ良かったって思わないように生活しろって。
浦戸 確かに言いますね。でも、あなたが言いたいことは、その逆ですね。
森下 うん。その通り。勉強だけが全てじゃない。結局、後悔するなって言われても何かしら後悔するんだよね。
浦戸 そうですねよね。人間は後悔する生き物なのかも知れませんね。人間は後悔することから学んで、一生懸命に今を生きていくものだと思います。
森下 こんな難しい話はやめにして、もう始めても良いわよね。
浦戸 では、お願いします。森下さん。 
森下 少しチクってしますね。我慢してくださいね。
浦戸 痛っ。もう入りましたか?
森下 大丈夫です。この血液は日本赤十字社に送られますから。ってあれ?もしもし。ダメだ。意識を失っている。血液検査は良好。なのにどうして?
   
浦戸 僕は、幻覚に襲われたようです。理由は分かりません。ですが、とてつもなくヤバいと感じます。どうヤバいかって?とにかく危険なんすよ。
精霊 何を言うのよ、あなた。
浦戸 誰やあんた!森下さんか?
精霊 森下って誰のこと?私は、ドラキュラの精霊。実は、あなたにドラキュラになってほしいの。
浦戸 それってどういう事ですか?
精霊 単純に人間の血を吸えば良いのよ。もし、吸い過ぎると失血死するからね。血液の量を見破ることがこの剣にはできる。少なくとも一週間は、吸わなくても大丈夫だよ。じゃあ、よろしく。
浦戸 ちょっと待ってください。ちょっと精霊さーん。

浦戸 ファッ!今のは何だったんだ?夢だろうな。まさか、ドラキュラになれとは言ってもそんな能力身につくはずないし。
森下 あれ?浦戸君。大丈夫だったの?救急車呼ぼうとしちゃったけど。
浦戸 すみません。お手数おかけして。
森下 良かった。生きていたんだね。
浦戸 もう大丈夫です。献血は、終わりましたか?
森下 もちろんです。気をつけてお帰り下さいね。
暗転
幻想 う、うるせぇ。俺は、輸血してまで生きていたかねぇんだ。
森下 お父さん。関東一円に縄張りを張る連合のトップなんでしょ?
幻想 だから、どうしたっていうんだい。
森下 関東一円を治める連合の首魁が死んでしまったら跡目争いで大変なことになるよ?
幻想 良いか?俺が死んでもたかだか関東が乱れるだけだ。関東一円なんて一円玉に換算する程の価値もねぇんだ。
森下 お父さん。いい加減に手術受けなよ。私、お父さんのことが好きだから。
幻想 うるせぇ。俺は、バブル期に生まれ、平成のバブル崩壊後の不況を目にしてリーマンショックもあった。一旦、アベノミクスとか言う政治で経済は好景気になった。だが、今の日本はどうだい!貧困率が約四割。街中じゃ、普通に訳のわかんねぇ変な薬が無料配布されててよ。
森下 だからって、負い目を感じて死ぬことはないでしょう。お父さん!
幻想 世間の人々は、俺を羨む。そしてマスコミに怯え、口止め料として一千万円払わされたりしてな。根も葉も無い噂なのに。そのせいで金は減る。
森下 でも、裁判所があるでしょ。お父さんの味方してくれるよね?知る権利とプライバシーを守る権利。裁判所は公平な裁判をしてくれるね。
幻想 その裁判所まで俺は信用できなくなった。最近、俺達みたいな金持ちは軽くあしらわれて、無産階級が優遇されているんだ。
森下 だからってお父さん。落ち着いて。私達は家族でしょ?私達はお父さんの事を裏切ったりしないから。
幻想 そうかい。俺は、もとはやくざものだ。とても世間に顔向けできる職業じゃねぇ。だが、このとてつもない時代だからこそ、俺は必要とされた。組を入りやすくして任侠団体ではなく一種のコミュニティーとした。多くの関係者には馬鹿にされ、盃を解消した組もあった。
森下 お父さん。必要とされているなら尚更生きているべきでしょ?社会の荒波に飲み込まれる弱いお父さんじゃないはずだよね。今は、東京オリンピックの建造物が、過去の遺構のようになっているけど。皆、必死になって生きているよ。お父さんを憎むのは一部の悪人たちだけで、皆お父さんに感謝してるよ。