『 ハナのアナ 』
のではないか、と考えるような出来事がありました。
その日、確かに私の穴はあなたと見えないトンネルで
繋がっていたのです。
会話が弾んだその時に、あなたの中に灰色の何かを見、
私が目を凝らした途端に消えたのでした。
それが私の中にあることを、鏡の中で知った時の
胸の高まりを、どう伝えたら良いでしょうか。
私は鏡に目を凝らしましたが、灰色のそれは消える
でもなく、いつまでもそこにあるようでした。
それで私は水に流すことにし、トンネルを通じて
やってきたそれは排水口の中へと消えていったのです。
しかし、誰かと見えない何かで繋がる世界に生きている
ことを知った私が生きるところなど、あるのでしょうか。
ハナのアナだけでなく、ドコのダレでも。
何しろ、目を凝らした時から、すべては始まり、
それを悟った時にすべては終わるのですから。