Neo Border 2015-002
The near future <仮想地球とラグナロク> 001
■ 001
Mark Frost(マーク)は旅行が好きな大学生。
Vacationの時期になるとよくいろいろな国へと旅に行きますが、今回の訪問先である中東でひとつの大きな悲しみと出会うことになります。
空港をでると遙か薄暮の空。
地図を片手に町を目指しているとストリートチルドレンらしき小さな女の子と出会いました。
いつもならやり過ごすのですが、なぜか今日は普段と違う感情がわきあがりました。
みやげ物らしき編んだ紐を受け取り、自分の手首に巻き、そしてゆっくりと話しかけると、 たどたどしいけど少し英語が話せます。母親から教えてもらったそうです。
彼女は最後に「将来は空港で働きたいの だってあそこから世界へいけるから」
バックパッカーの中では名の知れた宿で、最近この近辺が少しきな臭いとの噂話がロビーにてもちあがっていました。
この界隈の危険度はそれぞれのバックパッカーたちの守護妖精の意見が食い違っているため、 要領を得ず、「危険といえば危険」ということになり、いずれにしても明日あたり移動したほうがいいという話でみんな眠りにつきました。
--- ここでみんなが眠っているうちに背景をご紹介します。
この時代のバックパッカー旅行はほとんどの人が守護妖精と一緒に旅をします。
そして、守護妖精のアドバイスなどから行動や、目的地をリアルタイムで決めます。
そして実は守護妖精同士もコミュニケーションがとれます。
これは、この守護妖精システムを作った人たちががんばったおかげですが、これにより、 過去には想像できないほどのコミュニケーションがとれるようになりました。
あまりよく知らない人同士でも、場合によっては初対面の人同士でも、守護妖精同士を間に立たせることで簡単に会話ができ、 コミュニケーションもスムーズに行え、すぐに打ち解けることができます。
それは、守護妖精は、通訳はもちろん、相手の国家や、宗教などにも配慮した会話を行うのことができるからです。
これはとても大切な事です。
自分が尊敬していたり、守るべきしきたりを相手が侮辱したり、 けなしたりすることがほとんどなくなったのです。
そして次の良い点では、 例えば3人のバックパッカーが話をするときでも、まるで6人の人たちと話をするような状態になるので、 かなり盛り上がります。
ただし守護妖精が流行っているといってもそれは先進国の国々の話なので、 世界では守護妖精の盗難や紛失がよく起きます。
そこで旅行者が持っている守護妖精はクラウド系コピータイプの機能限定で、 すぐに作動不能となる廉価タイプがメインです。
また、このように通常携帯にリスクを伴う守護妖精の住むモバイルは、 通称 “Swan” とよばれています。
(拡張機器のイヤホンなどは “Feathers “。コピータイプ、オリジナルタイプなどいろいろなシステムや構成がありますが、詳細はまたの機会に)
また、ローカルな地域では、そのシステムを十分に活用できないこともあり、 そのような地域での街中ではあまり公然とは使いません。
バックパッカーの多用する場所は今回のように宿での使用となりますが、 それぞれの守護妖精の能力、システムはまちまちで、守護妖精同士の意見が違うことも多く、 やはり最後は自分の判断が道を開くことになります。
最後に守護妖精の価格は安いものは数ドルですが、高いものはミリオネアクラスもあります。
何が違うか興味のある方は検索してみてください。
そろそろ夜が明けます ---
明け方早々空港方面で大きな爆発音と、地震のようなゆれを感じました。
「No way…ほんとうだったんだ」
Markにとってはじめての出来事だったが、同じ部屋にいた、 長くバックパッカーを経験してきたWilliam Madison(ウィリアム)はすぐにカメラを持って飛び出ました。
Markも恐怖と探究心が入り乱れながら、ひこずられるように彼の後を追いかけます。
外に出ると空港の方角に向かうメインストリートの先で大きな黒煙が上がっていました。
いくつかの小さな爆発音、叫び声、向かう人、逃げる人、 昨日までの穏やかなメインストリートが今は、悪魔の領域となっている。
「自爆テロらしい」
爆発物のにおい、トラックや、自動車、ビルが真っ黒な煙を上げて燃えあがっていました。
散乱する破片、こげてくすぶる塊、砂埃、サイレンの音、叫び声が重なり響く、時折銃声も。
警察や軍隊によって封鎖されようとしていた一角にWilliamの姿を見つけました。
ファインダーの数メートル先には女の子を抱く母親らしき女性が、叫んでいる。
心臓が口から出てきそうなほどに、心がさわぐ
「そんなはずない・・ありえない」
彼女の夢が黒煙となって空へとながれたのです。
作品名:Neo Border 2015-002 作家名:Mick