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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『シナリオ名: トクを解く』

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この先、貴方の人生は呪われたものとなるでしょう。
そして、誰も彼もが貴方から目を逸らすのです。
嫌われ果てた貴方が・・・

「あのぉ、嫌なんですけど」

嫌でもそうなるのです、いえ、そうなるべきなのです!
それは貴方が前世いえ、幼少の頃からの定めであり・・・

「その呪いを解くことは出来ますか」


あ、そこからはねぇ、俺の仕事。
呪いが掛かるとのろくてのろまなピタゴラ作られるって。

「ピタゴラ?」

そう。ピタゴラスイッチってあるじゃん。
仕掛け通りに動いて、思い通りの結果になるって事。
お前、最近、のろまになったじゃん。
それ、呪いのせいだから。

いいのよ私などもう呪いを掛けるだけの邪魔者として存在し続けるだけなのだから。
それが私がやられたことなの。
貢献度合いも貴方より100倍でもね、さらっと軽い奴の話にしか人は耳など傾けないのだから。

そうかもね。でも、重苦しく考えてやるだけ損なのさ、人のことなんて。
とりあえず、いい案がある。旅行へ行けよ。

「旅行ですか」

旅行というのは何処までの話?
呪いが解けるかも知れないわね。

「私の悔しさも成仏できますか」

口惜しいことがあっての人生だからな。
今日、口惜しくても明日、口惜しいとは限らないだろ。

「たぶん、来年なら」

口惜しいことがあると、呪いが解けるかも知れない。

そのための呪いなのよ。

「そうですか。ところで、旅行なんですが」

教えたくないなぁ。教えてもいいけど。
君、昔と今のどちらが口惜しいの?

「・・・どちらかというと、今のほうが年齢的に」

あ、そう。じゃあ、将来的に呪いが解けるようなシナリオがいいかな。
あとね、悔しさが成仏すると死ぬから、人って。

口惜しさが成仏したって死なないわよ、糞が。
そもそも口惜しい気持ちが明日への生きる希望を作るのだから。

「将来的にって、いつですか」

将来っていったら将来なんだけど、シナリオ作るのも面倒になってきた。
君、面倒くさい。

しっ、聞こえるわよ。私達の将来も変わって来るんだから。

「じゃあ、私が作ります!」

え?
は?

「私、将来のシナリオを創るために、今ここに存在しているんです」

「それで、悔しさを成仏させるために頑張ることにします」

成仏すると死ぬわよ。

死ぬわけないだろ・・・復讐とかリベンジとかだけで生きてる奴らなんて
百万人いるんだから。

「呪われるのが嫌なので、呪いが存在しているんですね」

うん。
そう。

「私の存在している意味についての旅行を勧めてくれて、ありがとうございます」

本当はね、存在している意味とかあんまり関係ないんだけど。
そもそも俺らの存在意義と価値のために君がいるわけで。

違うのよ。今その娘、逃げようとしているの。

え、俺らから?

私達の存在意義を吹き飛ばすべくシナリオを作られてしまうわよ。

なるほど。しかし・・・


*******


あの頃、私は呪うという感情を知らなかった。
でも、もう全ては終わり、新しい春が到来している。

私は満開の桜を見上げ、目を細めた。
枝は水辺へ向けて腕を伸ばし、向こう岸へのアーチを作り上げている。

小さな淡いピンクの花片が灰色の道路に浮かび、春の風を待っていた。
それから、私は去年の今頃を思い出したが、その中に桜は無かった。

呼吸をしていることに気付いたのは、いつ頃のことだっただろうか。
風はまだ少し冬の匂いがし、私は桜並木の中で立ち尽くしていた。
この絵のような風景の中に溶け込んだまま、来年を迎えられないかと考える。

車が凄いスピードで横切るのが目に入った。
大通りに出るまでもう少しだ。
私は溜息をつきながら歩き出した。

呪いが解けても死んでないんですけど。

恨み言は彼らには聞こえない。
だけど、もう一つの答えがここにあるんだ、と私は思い、シナリオで稼ぐ人生
を選ばなかった不幸を呪った。