『 ある国へ: 我が国で最近人気の番組報告 』
殺人というような人道を逸れたものは、近未来の中には必要ないということで、排除されたのでした。
その、類を見ない方法は正直、どいつもこいつもやったことがないことをやってのけた国なのです。
しかし、それから数十年が経ち、最近になってようやく番組としても放送されるようになりました。
それが、超絶人気の『鳩ル路○嫌ル』なのです。
「死ぬのは、あんたよ!!」
「何を言うか、生きてていい奴など、どこにも居ない」
「あ、あひひ」
「私は、そのやうなつもりで、そのやうな事柄を行った訳では」
「雑魚は消えな!!」
「生き残るのは・・・君!かもしれない」
それは、とある国の無人島話を模したものですが、生きることの大切さを説く番組として、世界的に評価されています。
名前も色々で、プロフィールは性別と年齢、それから犯罪歴となっています。
彼らは服役中有名人としてテレビで大人気ですが、ことに実生活の記録と称して様々な服役生活を見せてくれています。人気になると、超絶人気番組(ゴールデン)に進出し、早めに人生を終えることが出来るのです。
「決め台詞を考えているうちに、模範囚として追い出されてしまいました」
その様な残念がられる人もいますが、彼らだけはその番組を見ず、仕事に打ち込んでいるそうです。実のところ、『鳩ル路○嫌ル』に出演する人々はそれだけで幸せに死んで行ったのではないか、と私は考えています。
番組が始まると、皆、生きている人がどの様に死んでゆくのかを真剣に見つめ、罪を犯すことと死ぬこととを秤に掛けるのです。しかし、塀のこちら側と向こう側の人間の境目がどこにあるのかを考える時、私は震撼するのです。
電車に乗る時、散歩する時、食事をする時、誰もが普通の人であるのに、人は人で無くなる時があるのでしょうか。それで、殺人とは画面の中にだけ存在を許されるべきですが、そのせいで殺人が存在しなくなってしまったと嘆く声が多いのもまた事実です。
そこには指示も何も無く、彼らの殺意が消え去るまでの時間が流れているそうです。
しかし、殺意が消えたその時、彼らの命も消えるのです。
「死ぬのは、あんたよ!」
今も彼らは、この国民の胸の中に生き続けていますが、きっと正しいことなのだと私は考えている。
作品名:『 ある国へ: 我が国で最近人気の番組報告 』 作家名:みゅーずりん仮名