down down down
ザァッ、と桜が散るように俺の世界はものの見事に変わった。
景色が、違って見える。
桜が視界を埋め尽くす。その様子と類似している、俺の価値観の変貌。
人のために何かに苦しみ憎むことはきっと、もう、ない。
人を愛せなくなったいまとなっては。
人の死を悼み、加害者を心が千切れそうなくらいに憎むときはもう、こない。
なぜなら人を愛せないのだから。
他人に何かを求めることはしないだろう。
「ここに一人」
稀に好意を抱く人間は現れてもきっと遠目に眺めるだけにしよう。すべてを求めてはいけない。誰と話していても本音で語り外面を砕いて笑うことは出来ないでいる。
hatehatehatehatehatehatehate...
lielielielielielielielie!
この俺という存在は、客観視出来るものにしか受け入れられないし愛せないし分かりあえない。でも、客観視なんて出来る人間は稀だ。そして、蔭りのない無償の優しさを与える人間はもっと稀でこの世に存在するのかすら疑わしい。
孤児のように優しさという名の甘い飴を、同情でも憐れみでもいいから。それをずっと欲しがっていた。惨めで格好悪くたって、どんなに無様でも。
もう、いらない。必要ない。
愛して下さい。そういう以前に、自ら愛を配ってください。
もう言葉に出来ない。
さようなら、過去の自分。
明日へ生き延びても変わることのない風景。それを変える余力は俺に、ありますか?それでも・・・
「愛して下さい」
俺を愛するならばすべて愛して。この狂気も冷徹なココロも、絶望を見た瞳も、尋常じゃない虚飾も、平常じゃないすべてを。
「愛して下さい」
強く強く人を突き放せばいつか、本当の誰かが引き揚げてくれる気がして。
還らない日々に焦がれて叫ぶ。届かなくても叫ぶことに意味があるのだと信じて。
作品名:down down down 作家名:一ノ宮