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銚子旅行記 銚子からあのひとへ 第五部

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 予定外の買い物だったけれど、いい買い物ができた。それでも、まだまだ時間はある。駅前の喫茶店で時間を潰すことにした。時間潰しには喫茶店が最適だ。昔ながらの喫茶店という感じのこの店は、ママさんが一人で切り盛りしている。〝待合室〟という名前だけれど、僕のように列車の時間までの時間潰しで来ている人より、近所の人が集う場所という感じがする。ここで冷たいカモミールティーを飲みながら、ひたすら本稿をまとめて時間を潰した。カモミールティーはガムシロップを入れて飲むと甘さが口いっぱいに広がっておいしかった。

 1時間ほど時間を潰して店を出る。店にはピザトーストなどの軽食もあったけれど、結局、カモミールティーを飲んだだけ。駅のニューデイズでお茶や酒を買うついでに、何かサンドイッチでも買おう。
 すぐ目の前にある銚子駅に着くと、すでに東京行きの特急しおさい十四号が入線していた。往路と同じ〝255系〟だった。改札口越しに列車の様子を見てみると、車内清掃も終わっているようだった。早めに食料を調達して、列車の中で待機しよう。
 ニューデイズはJR東日本の駅だったらどこでも見かける。地元の東所沢駅にだってある。しかし、ここのそれは、観光地の駅とあって、土産物もたくさん売っている。もう土産物は何も買わないけれど、ついつい見てしまう。場所柄、〝チーバくん〟のグッズがあるのはよく分かる。しかし、ここぞとばかりに〝ふなっしー〟のグッズまで置いてあったのは面白い。
 お茶と酒を買うけれど、買い物はそれだけではない。〝ぬれ煎餅〟も買って行く。土産物ではなく、東京駅までの道中で食べるものだ。ちゃんと包装された五枚入りのものを買い物かごに入れる。弁当などが並んでいるコーナーを見てみると、〝銚子の鯖すし〟とパッケージに書かれた駅弁があった。どんなものだろうか。880円と、やや値が張る。しかし、駅弁としては適正価格だ。道中の食事はこれにした。
 食料の調達を終え、列車に乗ろうと改札口へ向かった。ところが、帰りの切符をどこにしまったか、コロッと忘れてしまった。慌てて上着のポケットなどをまさぐる。改めて切符を買っても補って余りある金は持っているが、何とか見つけなくては。探した結果、帰りの切符は、〝トイデジ〟の入っている肩掛けカバンの奥にあった。安心して改札口を通る。考えてみると、今日は〝トイデジ〟の出番がほとんどなかった。
 カバンを2つに、土産物が入った袋が3つという重装備。まるで〝お上りさん〟だ。列車に乗り、カバンを全て座席に置く。これで席は確保できた。また列車の外に出て、タバコを吸ったり、駅の風景の写真を撮ったり。そして、また列車に戻って弁当を食べる。
 回るとか回らないとか関係なしに、久しぶりの寿司だ。包み紙を取り、発泡スチロール製だけれど木箱と見まごう箱を開けると、袋にパッキングされた寿司と醤油、〝ガリ〟が入っていた。寿司はさらに、ラップに包まれているようだった。うまそうだけれど、過剰包装だなあと。それはそれとして、包装をはがして食べてみる。しめサバの寿司だった。酸味もちょうどいい。厳重に包装されていた甲斐があって、わさびも飛んでいなかった。駅弁だけれど、侮ることはできないうまさだった。量に関して言うと、食事向きと言うよりは、軽食向きだった。
 久々の寿司を食べ終えたところで、時計とにらめっこ。もう一服できるだろうか。随分と迷う。結論としては、タバコを吸いたくなったらポケットに入っているガムを噛んで我慢することにした。この判断が、裏目に出なければいいのだけれど……
 売店で買った〝ぬれ煎餅〟をかじりながら缶チューハイを飲んでいるうちに、発車時刻となった。列車はゆっくりと銚子駅から滑り出す。結局、今回もまた、〝彼〟と再会するという夢が果たされることはなかった。
流れて行く景色を眺めながら、ぼんやりと考える。
〈次に銚子へ来るのは、いつのことになるだろうか〉
もしかしたら、今度は1001号車の引退が決まった時かも知れない。窓の外は、夕陽さえも消えかかっている。その中に見える風車のシルエットが、
「また来いよ!」
 と言いながら僕に手を振っているようだった。また来る。頑張って、あのひとと。