Human Death Game
『昨夜7時、世界各地に隕石が落下にました。尚、隕石による被害は今のところないとのことです』
ある晴れた春の日曜日、日本、いや世界各地でこんなニュースが流れた。
当然この日本にも隕石が落下しており、俺の住む子汐市にも幾つかの隕石の残骸が残っている。
「昨日の隕石って日本だけじゃなかったんだなあ」
新聞を読みながらトーストをかじっているパジャマ姿の親父は言った。
「そうみたいね。よかったわ、今日のデート中止にならなくて」
ふふっと笑いながら親父にコーヒーを注ぐお袋。
今日は結婚記念日で、朝からデートに行くらしい。
もう結婚して20年ほど経つのに、まだ初々しい付き合いたてのカップルのような二人。
結婚記念日にデートを欠かしたことは一度もないらしい。
「つかさ、帰りは明日の夜になるからお前も彼女連れ込んでもいいぞ、ははは」
いたずらっぽく笑う親父。
「そんなんいねえって……」
俺はトーストをかじり、テレビに目を向ける。
『隕石には謎の生命体が付着しており、アメリカを始めとする国が研究を始めました』
「ほう、昨日落下してきたのにもう研究を始めているのか」
「そんなことどうでもいいから早く食べて早く着替えて早く行こうよお」
いつまでたっても食べ終わらない親父に痺れを切らしたお袋は遊園地に連れて行ってもらう子供の様に催促する。
「わかったわかった」
そう言うと残りのトーストを口の中に詰め込み、コーヒーを流し込んだ。
「それじゃ行ってくるから!」
10時。私服に着替えた親父は、お袋と腕を組み駅まで歩いていった。
今日は愛車のセダンではなく電車を使うらしい。
「いってらっしゃい」
微笑ましい、付き合いたてのカップルのような熱々な夫婦の背中を俺は見送った。
それが最後の別れだとも知らずに……。
これから始まる生死を賭けた戦いが始まることを知らずに……。
作品名:Human Death Game 作家名:城嶋移山