会いたい人
第一印象は、「なんかチャライし、軽そうだし、やたら頭とか触ってくるし、変な人だな」という感じだった。しかし、そのチャラさにも軽さにも、全く嫌みが無かった。嫌みというか、いやらしさというか。それに誰に対しても態度が変わらなかった。パートのおばさんにも、バイトにも挙げ句の果てには部長にも、馴れ馴れしかった。ここまで来ると見ていて清々しい。媚びることも、偉ぶることもない。ただ、人と関わることを楽しんでいる。非常に羨ましい。肩を叩き、腕に触れ、くだらないことをペラペラと喋り続ける。それが彼の「普通」だ。
私は彼の事を、「コミュニケーション能力の塊」と呼んでいた。人に恐れを抱いたり、警戒することが無いのだろう。本当に尊敬する。
彼がいると、職場の雰囲気が全然違った。忙しさに疲れ、何となく空気がギスギスドロドロしている時も、それがふわっと和らいだ。その頃はまだ下っ端の仕事しか出来なかった私は、彼の言葉に何度も救われた。
もしも、現在の職場に彼がいたら、状況は全く変わっているのだろうと思う。後輩や先輩の距離がもっと近づいているに違いない。もっとみんなが同じ方向を向いて、まとまっているに違いない。確かに強烈な個性の持ち主だったが、だからこそ失った時の喪失感は大きい。
時々、どうしようもないほど会いたくなる瞬間があるが、今となってはそれは叶わない気がする。連絡先も知らない。ツイッターで見かけたが、唐突にフォローするほどの度胸もない。「ありがとう」と伝えたいが伝えられない。
もう一度会えたら、話せたらな。今どこで何をしているのだろうか。貴方にとても会いたい。どうか元気でいてほしい。ありがとう。