小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

またあの男の子が現れた。

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

男か女か分からないけど、私が見る限り子どもに見える。
その子にもう一度同じことを言ってみた。
その子は首を振って嫌がった。
『じゃあ、そのままそこにいるの?』
と聞いたら、それも嫌だと首を振った。
わがままだなぁ~と思いながらも、
『神様は助けてくれるよ。』
と言ったら、
『神様、怖い…。』
と聞こえた。
私はそういうことかと分かった。
『大丈夫。怖くないから助けてくださいって言ってみて。口で言うだけでもいいから。』
と私は言って、その子を見つめていた。
足の爪先同士をモジモジさせながらためらっているのが分かった。
『それじゃあ、せーので一緒に言おうか?!』
と私は提案した。
するとその子は下を向いたまま肯いた。
『分かった。神様助けてくださいって言うよ。せーの…かみさま…助けて…くだ…さい…。』
とその子の声を聞きながら合わせつつそう言った。
やっぱりあの時と同じで、光が差し始めた。
そして同じように上に上がって行くのが見えた。
どうやら助けて貰えそうだ、よかった、よかった。
私はもういないだろうと思いついつい、
『助けて欲しい人~?!』
と大き目の声を出して言ってみた。
まさかもういないと思っていた中、
『はい。』
『はい。』
『はい。』
『はい。』
『はい。』
と数えきれないほどの声が聞こえた。
今の一部始終を見ていたか聞いていたな…と私は気付いた。
そんな数の声だけど、全ての人が見えるわけでもなく、遠くからも聞こえた。
すると上が、
『出来たじゃないですか。それでいいと思いますよ。引き続きお願いしますね。』
と他人ごとのように言われた。
全くもう!!自分ですればいいのに!!
そして遠すぎて見えない人たちにも向かって同じことを繰り返した。
とんでもない数の人たちが上がって行くのが見えた。
神様とキリストに、
『どんどん上がって来てますよ。』
と言われた。
本当にこんなことをして良いのだろうかと疑問は消えないまま、数ヶ月間の間気が向いた時や“助けて”と聞こえた時にやっていた。
私から見える世の中、行く先々の景色や空気感が今までとどんどん変わって行くのが分かった。
単なる自己満足かもしれないが、目に見えて分かるほどいつもと同じ景色がそうじゃなくなった。
ここは本当に今まで住んでいた街なのだろうか…と思うほど見え方が変わった。
その人たちって世の中に迷惑かけてたのかなぁ~なんて思うこともあった。
だからと言って新しく見える景色が良い景色なのかそうじゃないのかは分からない。

そして、ある日にほとんど声が聞こえなくなった時に、
『もう助けるのは止めていいですよ。たくさんの人が戻って来ましたよ。ありがとうございます。よくやってくれました。』と上に言われそこで止めた。

それでも思い出すこともある。
その時はまた声を掛けてみる。
すると助けて欲しいと思っている人もちらほらいる。
その時は出来る限りやってみる。
拒否をして上がらなかった人も中にはいたりする。
私のように頑なな意地を持っている者も中にはいるようだ。
それもその人なのだから私は良いと思う。
上は何と思うか分からないけど…。


そして最初の男の子が上に上がって行って数ヶ月が経ったある日だった。
母親に抱き付いて微笑みながらその母親の顔を下から見上げている光景が見えた。
その子はお母さんの家に現れていた男の子だと上は教えてくれた。
『ちゃんとお母さんの元へと帰れたのですね。幸せそうでなによりです。』
と上の声が聞こえた。
神様は最後まで面倒を見てくれるんだと私は安心した。
お母さんに伝えたら、あんなに何十年と怖がらされていたのに、その母親の気持ちになったのか声が震えていた。
お母さんもやっぱり母親なんだとそれも知った。