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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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またあの男の子が現れた。

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お母さんから電話がかかった。
雑音が聞こえる…車からだった。
『車に乗ってるの?』
と私は聞いた。
『そうそう、今ひよちゃん(仮名;お母さんの妹)の家に向かってるの。一時間くらいかかるからその間暇だからかけた。』という理由だった。
『暇つぶしの電話ってことね…、納得…。』
と私は言った。
『それと今こんな風に上(神様)と繋がったじゃない?!ひよちゃんにその話もしようと思って、聖書も持って行ってるの。』
とお母さんは言う。
『へ~!!ついに話すのかぁ~。信じるかなぁ~。』
『ああ、それは大丈夫よ。今までしてきた神事のこともあるし、変なものもたくさん見てきたし、幽霊なんてしょっちゅう見てきたから…。だからこういう話は聞いてくれると思うわ。』
とお母さんは自信たっぷりにそう言った。
どうなるかはやってみないと分からないから、やってみてからかな…と思った。

それからしばらく適当に話をしていた。
私はその間チラチラと見えるものがあった。
でもお母さんの話の方に夢中で、そう気付かなかった。
そんな中、話が途切れる瞬間があった。
私も一呼吸置こうとお母さんに向けていた集中を止めて、ボーっとしてみた。
そしてそれは見えた。
間違っていたら悪いのでお母さんに言う前に、しっかりと見た方が良いと思ったので状況を把握した。
口に出そうとするとドキドキするようで、
『お母さん、お母さん…、後ろ…後ろ…。』
と文章にはならないスタートを切った。
それよりもお母さんがその言葉にビビッて、
『何?!何?!ちょっと気持ち悪いこと言わないでよ!!後ろが何?!お母さん今運転してるんだからね!!』
と慌てだした。
運転してるから慌てさせちゃいけないと理解した私は、
『えーっと、…お母さんの家で見た汚らしい男の子(タイトル;辞書。そして始まりのための始まり。参照)覚えてる?!』と私は落ち着いて聞いた。
なのにお母さんの慌てふためきは収まらず、
『えっ何っ?!えっ何っ?!その子がどうしたの?!…あの軍服を持ってた男の子でしょ?!どうして今そんな話をするの?!』
と返ってきた。
私の魂胆は無駄だったので、そのまま私は諦めて続けることにした。
『まあいいや。それでその男の子なんだけど、車の後ろに乗ってるよ。たぶん…後ろの左…。』
と私は言った。
もちろんその後お母さんの悲鳴が聞こえた。
そしてもちろん私のイヤホンもうるさかった。
『ウソ!!ウソ!!ウソ!!どうしたらいい?!どうして乗ってるの?!』
とお母さんは慌てている。
『あ~、大丈夫よ。おとなしく乗ってるから。…どうも付いてきたものの横に聖書があるからか下向いてる。』
『あ~、なるほどなるほど。ということは、こっちには聖書があるから大丈夫ってことね。それなら安心。』
『お母さん、、また連れて帰らないでよ。ひよちゃんちに置いて来てよ。次に帰った時にいたら嫌だから…。』
『えーっ!!どうやって~?!お母さんそんなこと出来ないよ~。』
と困ってるようだ。
それなのにお母さんは、
『でも、出来ればそれの方がいいね。』
と満更でもなさそうだった。
でもそんなことをされたらひよちゃんはたまったもんじゃないだろう。

それからその状況を変えられるわけもないと分かったので、自然と別の話をし始めた。
時折、お母さんから、
『まだいる?!』
と聞かれて、
『まだいる。』
と答えては、お母さんからため息が聞こえていた。
『…お母さんは見えないの?!感じたりとかは?!』
と私は聞いてみたけど、全く何も分からないとのことだった。

ひよちゃんの家に着いたので電話は切った。

しばらくしたらお母さんから電話がかかった。
もう帰っているのかと思って電話に出たら、
『まだひよちゃんの家なんだけど、あの男の子見える?!』
と聞いてきた。
唐突過ぎて、
『そんなの分からないよ。自分の意志じゃないんだから…。』
と言っていたら、男の子が見えた…。
これは何処だろう…と男の子を見続けた。
『お母さん、ひよちゃんちにピアノがあるよね。』
『あるある。そこにいるの?!』
『違う違う。ピアノを置いてるのはリビングの角?!』
『角って言うか…その辺。』
『よく分からないけど、ピアノを置いてあるその奥に角があってそこに体育座りするような感じでうずくまってる。』
と私は説明した。
『あーあーあー、分かった。角ってあそこね。あるある。』
とお母さんはその場所が分かったみたいだ。
『でも、その子さっきより辛そう…。どうもひよちゃんの家に来てみたものの、お母さんちより居心地が悪いみたい。どうにも動けないみたいだよ。』
『えーっ!!でもありがたいけど…。で、どうしたらいい?!』
とまた聞いてきた。
『分からないよ~。…あっ、お母さん、上が、“聖書をその子に向けて読みなさい。”って言ってるよ。』
『えーっ、聖書を~!!…何処を読めばいいの?!』
『何処を?!何処を読んだらいいんだろう…。あっ、上が、“何処でもいいのでその子に向けて、脅すのではなく、上に上がりなさいという気持ちを込めて読んでください。”って言ってる。』
と私は伝えた。
『分かった。一旦電話を切ってやってみるから、そっちで見てて。』
と言われて電話が切れた。
お母さんも無茶言うわぁ~と困った。
私の意志じゃないんだから何も出来ないのに…。
上が見せるべきと思ったら見せて、知るべきと思ったら知らされているだけなんだと思う。
それなのにお母さんはテンパっているからこんな結果を築いてしまう。
そう思う中、少し見えたりするからどうなっているんだ?!と首を傾げる。
傾げながらも目を閉じても見えるので、結局は知らされるのだ。
どうやら見えないながらもお母さんは一生懸命頑張っている。
上は見えないにも関わらず、信じて行うお母さんの姿に感銘を受けているようだった。
そしてまたお母さんから電話がかかった。
『どうなった?!どうなった?!全く見えないし、お母さん壁の方に向かって一人聖書を読んでるだけだったんだけど…。でも、天に上がれ~!!上がれ~!!って思いながら読んだよ。』
と言うお母さんからその状況の思いまで伝わってきた。
『少しだけどお母さんが言ってる姿見えた。男の子がめちゃくちゃ嫌がって、耳を塞いで体をねじらせながら苦しんでるのが見えた。…でもまだいる。』
と言うと、お母さんがオロオロしだして、
『どうすればいい?!どうすれば上に上がれるかなぁ~?!なんだかかわいそうになってきた。』
とお母さんが泣きそうになってる。
私も分からないし、こんなことしたことないし…。
私も焦りだした。
何か方法はないか…何か…と考えていて私は閃いた。
『お母さん、その子と電話代わって。』
『電話を代わる…?!そんなこと出来るわけないじゃない。』
と言われ、あっそうか…と私は気付いた。
『その子に携帯を向けて。こっちが話す。』
と言うと、お母さんは納得したようですぐにその子に携帯を向けてくれた。
『ぃぃょ。』
と少し遠くなったお母さんの声がした。
そして私はその子に向けて話し始めた。
『今のままでいるのは辛いから、上に神様助けてって言いなさい。』