小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第十六話

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

 もう一度強く手を握ってそこから移動しようとするが。
 まどかちゃんはまるで物言わぬ石像にでもなってしまったみたいにそこから動かない。

 「な、何が起こってるんだっ?」

 オレは訳も分からず慌てていると、さらに地面を満たしていた雨水が渦を捲いて。
 どんどんどんどん水かさを増して、オレたちをを飲み込もうとしているのが分かった。
 それに倣い、みるみるうちにまどかちゃんの姿が見えなくなっていく。


 「何だってんだよ! 一体、これは?」

 オレはそこからまどかちゃんを引っ張り出そうと、両手に力をこめる。
 しかし、踏みしめようとした大地はそこには無かった。
 まるで底なしの沼に足を突っ込んでしまったかのように、ずぶりと沈み込む感触。

 「く、くそっ!」

 オレは焦って、そこから出ようと水を蹴るが、
 排水溝に水が流れていくみたいにそのまま引きずられて、なす術もなく渦に飲まれていってしまう。

 水の中は、ほとんど何も見えない。侵食する黒く冷たい水。
 そんな水に飲まれ、沈みながら回転している様はひどく滑稽に思えて。
 ただがむしゃらに、まどかちゃんの手を放さないでいることしかできなかった。


 しかし。

 そのまま地面があったであろう場所まで潜ったところで、先程中司さんや快君たちと分断された時のような衝撃がオレを襲った。

 
 「がっ?」

 指先から地面に落ちたような、激しい痛み。
 思わず大量に息を吐き、その瞬間今まであった、まどかちゃんの手のひらの感触が消えているのに、愕然とした。


 (こ、このっ!)

 それでもどっかに排水溝みたいな入り口があるんじゃないかって、オレはひたすら水の中をもぐり続ける。
 
 頭や手が、何度も硬い地面にぶつかるが構いやしない。
 オレは、息をするのも忘れて、水と戦い続ける。


 だから、人は水の中で長時間動けないことをすっかり失念してしまっていて。
 ぶつりと、終わりを示すテープのように、かちんと音がして。
 オレの意識はどこかへ沈んでいってしまうのだった……。

 
            (第17話につづく)