消していいものと悪いモノ~夢,1~
周りを見渡しても木、木、木。
少し歩いてみると少し遠い丘の上、真っ白なドアを目が捉える。
少女は何もない森の中、唯一見える丘の上のドアを目指す。
ドアの元にたどり着き、少女はドアノブに手を掛ける。
不思議な安心感と同時に恐怖が背中をなぞる。鼓動が早くなる。
少しの勇気を出してドアを開くとその先は闇。暗闇。暗黒。
手を伸ばすけど何もない。
怖い筈なのに足が一歩、また一歩と進んでいく。
暗闇の中、灯りはない。
けれど何故か前は見渡せる。
見渡す限り、暗闇だが。
今来た後ろを振り返る。
しかし、今通ったはずのドアが無かった。正しくは、消えた。
少女は少しの焦りを抱き、足早に進む。
けれども進めど進めど何も、無い。
少女の不安は頂点にたった。
何も考えない。何も見ない。ただただ走る。走る。走る。
すると突然心が包まれたかのような、暖かい、安堵する空気と共に、瞑っていた目が光に包まれる。
少女はそっと、目を開ける。
真っ白、というよりはクリーム色のような空間。
気配を感じて少女は振り返る。
とそこには、笑った仮面を被った、
黒いタキシードの、背の高い、短髪の男が立っていた。
作品名:消していいものと悪いモノ~夢,1~ 作家名:夢乃尓柑