サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第十五話
というか、知ってたらそれはそれでびっくりだけどな。
「ああ、『輪永拳の心得』ね。オレの家、ちょっと前までじいちゃんが道場やっててさ。オリジナルの流派なんだけど、それを取り組むための心得って言うか……スローガンみたいなものだよ。ちなみに、五十まであるんだ」
「雄太さんのおじいさまが? それじゃあ、雄太さんのおじいさまも、すごい人なんだね」
「うん? ……まあ、ね」
まどかちゃんの表情が、暗くなったような気がしたが、それも一瞬だった。
「その心得は、おじいさまが考えたものなの?」
まどかちゃんは瞳を輝かせ、聞いてくる。
「うん、そうだよ」
「何だか、わるものをやっつける、ヒーローのセリフみたいで、かっこいいね」
子供みたいな台詞。
まぁ、実際そうなんだろうけど、そこまでして理想通りなのかなんて思うと、苦笑するしかない。
「カッコイイ……のかな? まあ確かに、じいちゃんの道場に通ってたのは、そんなヒーローに憧れてたやつらばっかりだったけど」
オレもその中の一人だった、と言うのは流石に恥ずかしくて言えない。
「かっこいいよ、わたし、何だか憧れるもん。それで、さっき言ってたの以外には、どんなのがあるんですか?」
「教えてあげようか?」
「うんっ!」
まどかちゃんは再び笑顔をほころばせる。
そんな顔されたら教えるほうも冥利に尽きるだろうなって思える、そんな笑顔だった……。
(第16話につづく)
作品名:サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第十五話 作家名:御幣川幣