リップはどんな所で生活しているのか…ふと思った。
ただ知りたいと思うだけでは、簡単には見せてくれない。
そんな時上(神様)は、“ただ、欲を持って求めては何も届きませんよ。その思う気持ちにも裁きは掛かっていますからね。その思いがただの面白半分ならば、リップちゃんがどのようなところで生活しているのかを見ることは出来ませんね。”と言ってくる。
上に届いたからと言って何でも教えてくれるわけでもなく、何でも見えるわけでもないと知る。
私が無意識の中、何かをしていた時だった。
またリップのいる草原が現れた。
リップがまた走っていた。
その景色はリップの走って行く方向しか見えない。
私から向かって左側にリップは走っていくので、左側しか見えない。
私は右側が気になった。
でもなかなか画面が動かない。
やっぱり自分の意志では無理なようだ…と諦めた時、右側の向こうまでもが継ぎ足されていくように見えた。
右側も変わらず草原だった。
なぁ~んだ変わらず草原かぁ~…と見ていたら、奥の方に何かが見えた。
…神殿だ!!石だけで出来た神殿があった。
奥行きが長い長方形に見える。
ずっとその神殿を見つめていたらいつの間にか近くまで来ていた。
出入口側の壁に石の柱が四~六本あるようだ。
紀元前にあったような石の建物に似ている。
あの時代の人ももしかしたら神様が見えて、同じ建物を建てたのだろうか…なんて思った。
出入口は一箇所で扉がない…のかなぁ~と首を傾げていると、
『出入口に扉はありませんよ。扉が閉まっていると入り難い方もいますからね。誰でもいつでも好きな時に、時には助けを求めた方が辿り着くこともありますからね。ちょっとした配慮ですよ。』
と上が言った。
私は思いやりがハンパねぇ~!!と思った。
すると上が、
『ハンパないですか?そう思うのでしたらなによりです。』
と言った。
こんな風にすぐ返される…。
『泥棒が入らないのかなぁ~。』
と思っていたら、
『あっ、なるほど~。そう思うのですね。でもここには泥棒はいないのですよ。だから扉がなくても安心というわけですね。』
と上が言った。
私は上の住人じゃないので、あっそうですかと肯くしか出来ない。
そして上が、
『宗教の人たちが建てている建物はこの建物のつもりかもしれませんね。聖書にも神殿について書かれていますね。私はここに住んでいるのですよ。もし宗教の人たちが、“神の神殿”と言って建物を建てているのであれば、私と同じ考えでなくてはいけませんね。ということは扉を付けてはいけませんね。二十四時間営業でなければいけませんね。私は営業時間を決めてはいませんよ。いつ人が苦しみ助けを求めてくるかは分かりませんからね。それか営業時間を決めている所は、苦しみ助けを求め始める時間と終わる時間が決まっているのかもしれませんね。私の所はそんなに器用な事は出来ません。神の名を語るのであれば、神がしていることと同じことをしなければ意味がありませんね。神の名を語りながら出来る範囲で…と言うのであれば、神の名を汚しているの…かもしれませんね。もしそうであるのなら聖書にどうなるかを書いているので、宗教の方々はそこを参照すると良いでしょう。』
と言った。
神様だったら器用に振る舞えそうだけど…と私はふとそう思うと、
『私もなんやかんや忙しいですからね…。因みに、その宗教の人たちが建てた建物に、私……いません。』
と間を持たせてそう言った。
本当に神様?!って面白いなぁ~とつくづく思う。
…とそんなことがついつい心を過るもんだから、私は慌てて、“いかん、いかん。洗脳されちゃいかんっ!!”と我に返るけども、そんな私に上は、
『聖書にはなんと書いてますか?私と話が出来た人たちは口を揃えて、“神と会話をすることは平和で楽しい。”と書いているのではないですか?』
と言うのだ。
私はその部分を読んだことがあるので、否定出来ないでいる…悔しい…。
確かに…書いてあった…。
言い返せない…。
そして上は続けて、
『しかし、宗教の建物には住んでいませんが、私を呼ぶものがいればすぐに耳を傾けますよ。しかしわがままな言い分では耳を傾けはしますが、聞くだけの時もしばしばあります。』
と言った。
それを聞いて思い当たる節があった。
上に、宝くじを当ててと頼んだら、
『バカチン!!』
と言われた。
『宝くじがダメなら…、競馬の万馬券がいい!』
と笑顔で言ったら、これまた、
『バカタレ!!』
と返された…。
お母さんにその話をしたら同じことを言われた。
確かにこんな願いはダメなようだ…無念…。
お母さんに神殿が見えたことを伝えたら、お母さんが見てみたいと言い始めた。
絵を描いてお母さんに伝えたいけど私は絵が下手なので…これも無念…となった。
作品名:リップはどんな所で生活しているのか…ふと思った。 作家名:きんぎょ日和